Xコア採掘

第13話 Xコア採掘

 その砂漠は、一つの魔法の傷跡だと言われている。
 
 そこに都市を築くことに、当時の人類は技術を誇る事の『見栄を張った』。
 
 そして、砂の海を作った魔法の研究の過程で、試験的に発動させ――暴走の結果、石の都は滅んだ。
 
 研究の対象となった魔法は、アースが暗号を解くことを止めた禁呪の一つであり、禁呪として最も名高い、『空間破壊呪』の最高峰を誇る威力の魔法である。
 
 アースが試した魔法は、そこまでの危険性は無いものの、禁呪として封印されていたものであり、イチ学生が使えて良いものではない。
 
「そんな魔法を、君がどうして使えたのかを追及するつもりはない。

 ただ、キミのレベルは、新入生の領域を遥かに上回り、部分的には、教師をも凌駕りょうがするものであることは確実だ。
 
 そしてあの晩キミは無差別に、『αシステム』を制御しつつ、脅威となるレベルで使えるまで、多くの生徒に知らせてしまった。
 
 これは大いなる問題だ」
 
 校長室に呼ばれたアース。理由はある意味、明らかだ。
 
「では、私はどうすれば良いですか?」

教壇きょうだんに立っていただこう」

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 ムーンにとって誤算だったのは、リックが思っていた以上のスキルを持っている事だった。
 
 特に、罠の発見率が異常に高い。
 
 問題は、それらのトラップのほとんどを発動させてしまうことだが。
 
「お手柄だ、リック」

「――そう?」

 リックは落とし穴の底から返事した。
 
 落とし穴が自動で閉じる前に、ムーンはそのシステムを停止させた。
 
 落とし穴と聞くだけでは、原始的なトラップかと思われるだろうが、何度も起動する落とし穴にX機関の技術が利用されているのは当たり前。
 
 リックは、閉じ込められることなく脱出した。
 
「『αシステム』の機能を停止する機能を備えられていては、ただの落とし穴すら脅威となる」

 事実、2メートルの深さに落ちたリックが怪我をしなかったのは、彼の身軽さによるものであり、『αシステム』によるシールド機能は、落とし穴の二つ目のコアによって、封じられている。
 
「あー、楽ねー。

 一週間かかって、コア一つをようやく回収とか、そ・ゆうの当たり前だから、気が抜けるわー」
 
「もう、帰還しても良いだけの成果だがな。稼げる時に、稼いでおきたい」

「ふーん……」

 リックが壁によしかかると、その壁が凹んで、飛んできた炎の槍を、危ないところで躱す。
 
「――それとも、トラップの異常に多い地帯なのか?」

「私らなら、その壁に不用意によしかからないよね」

「ウム。――意外と、見落としが多いのかも知れぬ」

 壁の仕掛けを見抜き、Xのコアを取り出す手際を見て、カメットはプロの仕事だと思った。
 
 コアを傷つけることなく手に入れるのは、偶然でしかあり得ないというのが、今までのカメットの常識だった。
 
 それが、本日だけで六個目の無傷のコア。
 
 一つ売れば、人が一人、一生食うに困らないと言われている代物だ。
 
「――何故、Xのコアを求める?」

「研究の為だ。売れば、研究の資金にもなる」

「そんなに幾つも必要なのか?」

「例えば――」

 ムーンは、先程手に入れたばかりの、直径10センチ足らずのコアを掲げる。
 
「コレと同じ性能のコアを作る技術は、既に入手している。

 だが、同じ性能のコアを作るとしたら、直径5メートルは下るまい。
 
 それが俺の持つ、世界最先端のX技術の限界だ。
 
 時として、コアを傷つけることもある。
 
 真っ二つに割ってみた事も、二度・三度。
 
 それでもなお、直径1メートル以下のコアを生成する事も難しい。
 
 仮に作ったとして、その性能は一日中、明かりを絶やさない、そのレベルが精一杯なんだ。
 
 コレを以って、何処にコアの収集を怠る理由がある?
 
 成分は間違っていないのに、同等の性能が発揮されない。
 
 全く、研究者を悩ませる存在なのだ、X機関という奴は」
 
「――例えば、じゃ。

 何処かに、Xシステムの技術を記した書物は残っていないのか?
 
 大昔の書物じゃ、そう簡単には見つかるまいが、コアだけを研究するより、遥かに効率的なのではないか?」
 
「――見つけた書物は、完全に解読を済ませている。暗号も全て読み解いた。

 はっきり言おう。
 
 世界を一撃で滅ぼした破滅の魔法を、俺は暴走させることなく使える。
 
 ――試したことは無いが、理論上では可能だ。試す気は無い。
 
 だが、その当時の人類は、『αシステム』のコアの研究に、執着が無いのだ。
 
 十分にコンパクトなサイズに収まっているからな。
 
 だから、『αシステム』を使う技術を研究した書物は、稀に見つかる。
 
 噂でも見知った書物はほぼ全て目を通し、解読を済ませている。
 
 故に、俺は世界一、『αシステム』を自在に使えると自負している。――それでは駄目なのだよ。
 
 探してみると良い。恐らく、俺の記した書か、その写本しか見つからない。
 
 その方が、現代のペクサーには有益だからな。
 
 ――世界の滅ぼし方を書いてある本など、誰も求めない。
 
 恐らく、この大陸には無い。
 
 そして、この世界に他の大陸があるという保証も無い。
 
 事実上、そんな書物を見付ける事は、不可能なのだ。
 
 だから、必要な技術の再現の為の研究をしなければならないのだよ、我々はな」
 
「――目的が分からん」

「大抵の人間には分からん。

 世の中には、自分の研究が命よりも大切な人間がいるという話だよ」
 
「金にはならんのか?」

「なる。が、それ以上の金を研究に必要とする」

 金銭的な利益だけを考えるのならば、『αシステム』を持ってトンズラするのが良いのかも知れぬと、カメットは本気で思った。
 
 だが、彼の本当の目的は、金では無い。
 
「――まさか、十分なコアを得たから、引き籠って研究に打ち込むなぞと、言わぬじゃろうな?」

「それこそ、まさかだ。

 ただ、コアの数だけ得たから研究なぞと、今さらそれだけを理由に研究に打ち込む根拠にはならない。
 
 それ以外の理由で、研究したい気持ちは無い訳ではないが、未だ、研究のみに打ち込む必要性を感じない」
 
「ならば、当面の目的は?」

「採掘だ」

 その日、十個以上のコアを得て、ダストへ戻り、支払われた報酬に、カメットとリックはひっくり返った。
 
 予想していた金額より二桁ばかり多かった為、その大部分を預金したが、二人は真剣に使い道に困った。
 
 とりあえず一晩飲み明かしたが、気持ちほども所持金は減らなかった。
 
 ――持ち歩けるような金額ですら無かったのだ。