第37話 羅閃の想い
――羅閃サイド――
考えてみれば、奇妙なものだ。
個人戦ベストエイトの内、半数が、俺と知り合いとで占めているのだから。
残る四人の内、三人が――三人と言うのは適切な表現では無いかも知れないとは思うが――スピリットの送り出したCPUキャラクターであり、しかもその内の二体は、ベストエイトに勝ち上がった俺と美菜姉ちゃんのキャラが元になっているのだから。
ついでに言えば、スーパーライトも、基礎理念は美菜姉ちゃんのキャラクター。
こうなると、俺たちは自分らの強さを認めざるを得ない。
もちろん、それは俺たちに限らず、他のプレイヤーたちも、そのことを認めざるを得ないのだろうが。
この大会が、内輪の争いと変わらなくなるまで、あと僅か。ジャンヌの非情な剣が、その時を導いた。
試合時間、およそ30秒。これまでの彼女の試合を考えれば、その相手となったプレイヤーは善戦した方だと言えよう。
それでも残念ながら、ジャンヌ・ダルクには一撃もまともにダメージを与える事は出来なかった。
そして今度は、俺の番だ。
「リヴェンジ、か……」
筐体の中で一人となってから、そう呟く。
不思議と、緊張感は無い。
この一週間、やるだけのことはやった。
だからだろう。俺が落ち着いていられるのは。
俺には他に、倒すべき相手がいる。
手の内を晒す覚悟で、ココは確実に勝たなければならない!
『READY?』
敵は、団体戦の一次予選でも当たり、先程も決着を着けそびれた、逃げるタイプのライトタンク――スーパーライト。
条件は、先程の戦いと大差は無い。
相手は疲れるということを知らない。やはり今度も、序盤が勝負だ!
『FIGHT!』
「キングス・ガード!」
叫ぶと同時に、俺は走った。
相手も同様にガード必殺を展開している。
敵との間合いは7~8メートル。速攻で詰める!その為に一週間も走り込んだのだからな!
パァン!パァン!パァン!
敵の銃弾が、ジャックの体を掠める。命中しても、ガード必殺を展開している今は、ライフを削る事も無い。
なので、その攻撃はショットガンを当てる為の隙としかなってはいない。
『キャノン!』
横にステップ。危ういところで、光線はジャックの脇を通り過ぎた。
「一発目!」
ショットガンが敵のライフを削る。連打は出来ぬ武器なので、大きく旋回してからもう一度!
一瞬のガードがそれを弾く。直後、敵は素早く飛び退いた。
「正ジャック!」
いくら移動速度が速いと言っても、銃弾には敵わない!
全くの無防備であったわけではなかったが、それでもまともにヒットしている。
これで試合の主導権は俺のもの!もう、下らぬミスなどしない!
「こんなところで、負けてたまるかぁっ!」