一回戦決着

第18話 一回戦決着

 俺より先に試合を終えていたのは、降籏さん、ケントに真次の三人だった。
 
「どうだった、結果は?」

 俺が問い掛ける。
 
「楽勝!」

 ケントが答え――
 
「ボロ負け」

 真次が答える。
 
 そして圭の試合の様子を見てみれば。
 
「圭も勝ちそうだな。

 とりあえず、一回戦は勝ち上がれそうじゃないか」
 
 俺は降籏さんの返事を待たずにこう言った。
 
「けど、まだ試合は一回戦なんだ。

 試合は結局、六試合。まだまだ気は抜けねぇ。
 
 いや、むしろまだ、本番は始まっていねぇ!」
 
「分かってる。所詮しょせんはまだ緒戦しょせんなんだ。気を引き締めていかないとな」

「所詮は緒戦……。ギャグのつもりか、それは?」

 真次の言葉にケントが突っ込みを入れる。
 
「いや。そんなつもりはない」

 そんな下らない話をしていると、圭がようやく勝負を終え、筐体から出て来た。
 
 最後は時間切れによる、残りライフの差で、勝敗が決まった。
 
「うひゃぁーっ。何とか勝てたよ。

 それで?試合はどうなったんだ?勝ったのか?」
 
「ああ、俺たちの勝ちだよ。

 しかし、それほど強いチームじゃなくて助かったな。
 
 これ以上に強いチームが出てきたら、正直言って、手に負えないんじゃないか?」
 
「何を弱気な事を言っているんだ、蒼木!

 お前は事実上、ケントと並んでこのチームのエースなんだぞ!
 
 この程度で弱音を吐いてどうする!」
 
 言う真次に、俺は少したじろいだ。
 
「第一次予選は敗退しても仕方が無い。俺と圭が、正直言って、足を引っ張っているからな」

「何おぅ!」

 戦力外扱いされて、圭が怒る。だがそんな事は気にせずに、真次は続けた。
 
「俺たちの狙いは、どうしても第二次予選にならざるを得ない。

 だが、俺か圭が上手く勝ち上がれば、第一次予選で勝ち上がる可能性もあるんだ。
 
 その為には、ケントと蒼木には勝ち続けて貰わなければ困るんだ!」
 
「あのぉ~」

 真次が力説する中に、降籏さんは割って入ろうとした。
 
「ん?何?」

「私は戦力に数えて貰えないんですか?」

 何とも答えづらい問いかけを、彼女は真次に浴びせた。
 
 正直に「うん」と言う事も出来ず、真次も少し迷ってから答えた。
 
「百合音ちゃんは、試合を楽しんで貰えれば良いから。無理して勝とうとしなくてもいいよ。

 俺たちも口では色々言ってるけど、本気で優勝狙ってるワケじゃないから。
 
 もちろん、予選位は突破したいと思っているから、降籏さんにも勝ってもらえれば助かるけどね」
 
 上手く言い回して、真次は降籏さんの口撃こうげきを受け流した。
 
 降籏さんも、半分騙されたような気分を表情に見せつつも、すごすごと引き下がった。
 
「さて。一回戦には勝てた訳だが、これから試合は早いテンポで行われるぞ。勝ち上がれば勝ち上がる程に。

 後半戦は、体力勝負だ!」
 
 などと言っている内に、俺たちの二回戦は始まってしまった。