情報漏洩

第16話 情報漏洩

 昼休み。
 
 アースは、カメットとリックの二人に声を掛け、学食に行くことにした。
 
 さて、まず何から聞くべきか――
 
「リックさん、この醤油炒め飯、美味しくしていただけます?」

 実は、その機能を持つソフトウェアをアースは入手し、『αシステム』にインストールしていたのだが、リック程の効果を出せていないのが現状。
 
 もしかしたらと思い、リックの実演を見てみようと思ったのだが。
 
「良いよ。

 美味しくなれよ~」
 
 『αシステム』の反応としては、特別な事は何も無い。ならば――
 
「リックさん、今のソフトウェアを使う時に、どんなイメージを思い浮かべています?」

「ん~、AZUKIに伝わる秘伝の出汁ダシ

 成る程。と、アースは唸る。
 
 試しに、一口食べてみる。――やはりいつもより美味しい。
 
 今度は、アースなりに出汁のイメージをして、その醤油炒め飯に魔法を掛ける。そして、一口食べる。――更に美味しくなった。
 
 これで納得した。『αシステム』を使う上においては、イメージの確かさが非常に重要なのだと。
 
「あの!お二人とも、休暇を取っていた間は、ノトスさんと一緒だったんですよね?

 一体、どんなことを為さっていたのでしょうか?」
 
「――言って大丈夫なのかな?

 『αシステム』コアの発掘」
 
「それで、沢山取れたから、売りに出しているのですか?」

「いやぁ、それとはどうも様子が違うようだ。

 確か、隠された古文書を発見して回収していたから、『αシステム』コアの作成方法でも知って、テストで作ったものの処分をしたんじゃないかのぅ?」
 
 『αシステム』コアの製法!しかも、個人用のレベルで!
 
 それは、重大な発見だったのではなかろうか?
 
「凄い金額の報酬も貰ったしねぇ」

「……ん?――あ!アース嬢、今の話、忘れて下され。やはり、あの報酬は口止め料を含めての可能性が高い。

 はっきりとは言っていなかったが、でなくば、あれ程の報酬が支払われる訳が無い。
 
 リック。お前も余計な事は言わぬようにな」
 
「今回に限っては、ジイサンが話し始めたんじゃないか!」

「まぁ、そうなんじゃがのぅ……」

 言ってから、カメットが気付く。
 
「ん?コアの発掘に関しては、リック、おヌシから話し始めておろうが!」

「そうだっけ?

 まぁ、細かい事は気にしなくても大丈夫だよ」
 
「おヌシは……。全く。

 と云う訳で、コチラの事情は話せん。スマンのぅ」
 
「――1つだけ。

 ノトスさんはお元気でしたか?」
 
「むぅ……そのくらいなら言っても良かろう。

 元気じゃったよ。じゃが、しばらくは得た古文書の研究でもするのじゃろう。――ん?これも云ってはダメじゃったろうか?
 
 スマヌ、忘れてくれ」
 
 こうして結局、秘密な事情はほとんど聞き出せなかったものの、アースはムーン=ノトスの無事と元気を確認して、安心するのだった。