第4話 大会予選
『武闘大会』及び『魔闘大会』、予選の第一日目。
出番は、ジェリーの方が早かった。
四面の闘技場が設けられた円型見学座列。そこには、万にも届かんばかりに観客が集っていた。
どうやら、公認のギャンブル要素も盛り上がりの一要素となっているらしい。
出場者は賭けを禁止することで、八百長をしづらくしているらしかった。
ジェリーの一回戦目の相手は、中々の実力者だった。
当然、ジェリーは敗退するものの、相手の動きは凡そ覚えておくことにした。
すると、プリンが『刻の繰り返し』を発動したらしく、気がついたら、今朝、目覚めた時刻になっていた。実際はあと数時間、睡眠時間も繰り返されたものと思われる。
「ねえ。情けない試合をしないで頂戴」
プリンは朝食の席でそう言ってくるが、無茶と云うものだ。実力差は、かなりのものであった。
「アレが今の僕の精一杯だよ」
ジェリーは事実をただ語る。
「ダメ。あと三回以内には勝ちなさい」
まるで、それが出来なかったら護衛失格の烙印を押すとでも言いたげであった。
仕方なしに、試合の流れを思い出した。
一瞬、そう、ほんの一瞬、相手は隙を見せた時があった。ただ、前回はそのタイミングで体勢を崩されたから負けたのであって。
ジェリーには、その一瞬しか勝機を見出せなかった。
ならば、その勝機を掴むまでのこと。
その対策を実行すべく、基本の流れは変えずに進める。
実際に勝てたのは、四周目のことだった。
だが、対策を立てたので勝てたのであって、腕前が上がった訳では無い。
ともあれ、これでプリントの約束も果たしたと、二回戦目の前に、プリンの一回戦を見学に行くジェリー。
プリンもまた、一回戦目で負けて、プリンが死んだ訳ではないが、プリンがブドウ糖を摂取したのだろう、『刻の繰り返し』が引き起こされた。
またしても、起床時刻からのやり直しである。
「ちょっと、プリン。負けたからって、コッチもやり直しなんて、酷くない?僕、勝ったんだよ?」
せめて、次の相手と見えておきたかったジェリー。
「じゃあ、次はジェリーの二回戦が終わってからやり直すよ。
私も、あと三回以内には勝つから!」
「一度勝てたからと云って、楽に勝てる相手では無いんだけどなぁ……」
気分としては、定石の確立のための対策をする、と云う事になる。僅かばかりながら、ジェリーの腕前は上がっているのだから、勝てないこともあるまい。
ジェリーが勝ち上がりながらも、プリンも三周目で勝ち上がった。
これは、かなりの回数をやり直すことになるなと、ジェリーは覚悟を決めた。
だが、第三回戦を勝ち上がるまで、計百周以上をやり直すことになったのは、ジェリーにとって大きく誤算だった。
プリンが第三回戦を勝ち上がった。その事実を以て、やり直しを止めようとジェリーは提案したが、プリンは頷かなかった。
「ジェリーの剣の腕、明らかに上がっているじゃない」
当たり前だ。百回以上も繰り返して、一回戦に関しては作業感が出たところで、ジェリーは実力で勝てるところまで、やり直したのだ。
相手のクセまで見抜き、一番楽な勝ち方を探る。作業よりは何ぼか楽しい訓練だった。
「とにかく、四回戦を七周以内に攻略。コレで、今日の予選は終わるわ。
私も、多分勝てないけど、四回戦には七回挑むから」
そう言ったプリンが、四周目からは四回戦に勝ち上がり、ジェリーに「ま~だ~?」と催促してきたことには、ジェリーは内心、「コイツ、拳骨でも喰らわせてやろうか」と思ったことは秘密である。
尚、ジェリーは七周目で四回戦を勝ち上がり、二人揃って予選突破となる、偉業 (?)を果たしたのだった。