第12話 飛行技術
カメットとリックが、『αシステム』対戦を繰り広げる。
基本的な機能しか使っていないのだが、その内容は、ムーンに納得のいくものだった。
「そこまで!
十分だ。石の都に向かうぞ」
カメットとリックから、「基礎的な『αシステム』の使い方は習得した」との報告を受けて、二人を招聘して、まず行ったことがそれだった。
「ねぇ、ムーン。この二人、多分、大アルカナ発動は出来ないよ?」
「構わない。自分の身を護れれば、それで十分だと見込んでいた。
二人共、『αシステム』の通常威力の攻撃に、耐えた。
即ち、核兵器の威力にも耐えられるという事だ」
「核?――ああ、あの、使えないエネルギー変換技術?
確かに、『αシステム』以外の手段よりは、大きなエネルギーを得られるけどね」
「それが出来ねば、お話しにならない」
石の都。
技術の粋を尽くして、砂漠に築かれた唯一の都市。……だった。
今は壊滅し、そして――
「石の都になんぞ、トラップが仕掛けてある以外に、何も無いではないか」
「それが重要だ」
トラップ。そう一言で済ませれば、何の価値も無い存在かも知れない。
しかも、トラップが護っていた物は、ほぼ全て、盗掘により、失われている。
「落とし穴とか、原始的なトラップだけならば、確かに価値は無いがな」
「――何が目的だ?」
「トラップだ」
カメットとリックには、訳が分からない。
だが、リックは未知の廃墟に好奇心が湧かないでも無かったし、カメットはムーンとスターについて行く事に、メリットの存在を嗅ぎ取っている。
「だが、あそこまでどう移動する?
馬車も出ていないぞ。貸し切りでも、断られるだろう」
「空を飛べば、数時間で済む」
リックは好奇で跳び回り、カメットは疑いの目を向ける。
「……『αシステム』で、空を飛ぶことが可能だと聞いた覚えが無いがな」
「有名な話だと思ったがな。
不親切に云えば、『αシステム』で空を飛ぶことは可能だ。
親切に云えば、それを制御する性能は、『αシステム』に備わっていない」
「――どうするつもりだ?」
「制御ソフトは、既に仕込んである」
それからは、カメットとリックが、空を飛ぶ為の練習が、約1時間続いた。
低空で飛び、特に着地の練習を重点的に。
リックは5分で「合格」と言われ、カメットは1時間が過ぎてから、嘆息を尽かれた。
「仕方ない。そろそろ行くぞ」