第6話 ハゲデブオッサン
──Side:デッドリッグ
18日が過ぎ、6人全員と関係を持つに至った。
ローズを除く全員に確認しているのだが、「開拓地送りになって迄、俺と添い遂げる覚悟は出来ているのか?」との問いに、全員が『Yes』との返答をした。
ローズに関しては、3日後に確認する予定だ。……が。
俺は、ランチの時間に隣に座るローズにこう耳打ちした。
「(なぁ。全員の身柄の確保の約束はするから、ああ云う関係を持つのは、その……回数の上限を決められないものかなぁ?)」
「(前者については当然ですけれども、後者に関しては……多分、全員が拒絶するものと思われますわよ?)」
「(……何故?)」
「(女性にも性欲と云うものはあると云うお話ですわ)」
想定外の返答に困惑する。
「(でも、その為のオモチャみたいにならない為に、バルテマー兄上を裏切ったのだろう?)」
「(まぁ、強く拒絶もされましたけれども。……ワタクシの場合)」
「は?」
ローズの攻略条件は、「強く拒絶しない事」だった筈だ。故に、誰もが攻略してしまう、チョロいキャラと云うイメージが強かったのだが。
「兄上、相当の覚悟をしていらっしゃるな……」
ソレは恐らく、特定のキャラを壊してしまわない事を目指しているからだと思うのだが……。
だが、8人目に関しては、恐らくバルテマーは壊してしまうだろう。
ソレに関しては、8人目のヒロインの前世の記憶の有無が大きく左右するが、俺達全員、追加コンテンツ導入前の前世の記憶しか無いのだ。
予防方法については、唯一つ。──7人目のヒロインも同時に攻略してしまうことだ。
だけど、攻略条件が判っていないキャラに関して、攻略をしながら他のヒロインにも手を出すのは、難しかろう。
最悪、他7人全員未攻略と云う条件だって考えられるのだ。
ただ、恐らくは8人全員同周攻略は恐らく可能なのだろうから、そんな条件ではあり得ないだろう。
確かに、来年のスケジュール的に、もう一人を攻略するだけの余裕は、7人全員同周攻略時にはあった気がする。
最年長のローズは、俺の2つ上、兄上の1つ上なのだ。つまり、来年にはローズが居た時の分だけ余裕が出来るのだ。
そして、最低でも一人分は、追加コンテンツが用意されていたような展開であった気もする。
更に言えば、その追加コンテンツ・キャラの人物が、前世の記憶をどの地点で持っているのかも不明である。
しかし、兄上は性欲に負けなかったんだな。その一点だけ見ても、この世界のバルテマーはまともだ。
正直、ローズ溺愛コースに入っていた場合、俺には予防の術も無く、見捨てた以前に前世の記憶を取り戻した時点で、手遅れの可能性もあったのだ。
こればかりは、バルテマーとローズ、序でに言えばバチルダ、アデル、ベティーナに関しても言えるのだが、手遅れだった可能性は十二分にあった。
いっそのこと、四人全員攻略されて居れば安全だったと云う説も言えるだろう。
設定上のバルテマーは、大変お盛んだったと言えるのだ。
四人全員未攻略は、奇跡に近いが、バルテマーの立場で前世の記憶を持っているならば、確かにそう判断するのも間違いでは無い。
だが、前世の記憶を持っていたとしても、バルテマーに性欲が無い訳では無いのだ。よくぞ我慢したものだ。
対してデッドリッグは、ヒロイン候補生達を悲惨な末路から救う為とは言え、既に6人を毒牙に掛けている。
その事実は、「最低」と云うレッテルを貼られるには十分なものだった。
現に、昼の食堂で、こっそりと様子を窺い乍ら、ヒソヒソ話をしている者が少なくない。
デッドリッグにしてみれば、「俺達の立場と状況と云うものを、前世の知識も無いクセに、考えずに言うなよ!」と云うのが本音だ。
まぁ、だからと云って、バルテマーやデッドリッグに、ハゲデブオッサンにならないと云う保証も無いのだし、若い内にそんな奴の相手をさせられるのは可哀想だと云うのが本音だ。
これが、白髪に近い金色の髪が似合う、少々太めだがその分貫禄のあるオッサンだと言うなら、デッドリッグも率先して見捨てただろう。
具体的に誰だったかははっきりとは覚えていないが、酷いサディストに惨殺されるエンディングを迎えるヒロイン候補だって居るのだ。
そりゃ、悪役ながらに一番人気のデッドリッグにお鉢が回るのも、当然と言えよう。
だが、来年入学するであろう、7人目のヒロイン候補と、ひょっとしたらこの世界では実装されているかも知れない追加コンテンツに因る8人目のヒロイン候補生2人には、デッドリッグは干渉してはいけない。
バルテマーが狙っている可能性があるからだ。
今年入学した2人は、既に袖にしたとの話だから、バルテマーも無理には狙っていまい。
そもそも、既出のヒロイン候補6人は、デッドリッグを相手に純潔を散らしたのだ、事実上の婚約状態と言えなくもない。
バルテマーがどう云う方針で居るのかは知らないが、デッドリッグは、その辺りを一度、話し合う必要があると感じていた。