第49話 スポンサー契約
結局、『King』は何回かは老師・岡本道場の面子を避けたものの、その数回を除いて、積極的に老師・岡本道場の面子との直接対決に挑んできた。
恐らくは、高順位プレイヤーを避けていても、上げられる世界ランキングにも限界を感じたものと思われる。
老師・岡本道場は、一応会費制で月¥10,000程度を岡本に支払っているものの、先日、夕姫が昼姫のスポンサーのライバルたる化粧品会社のスポンサーを得て全員スポンサー持ちとなった。
スポンサーによる出資は馬鹿にならない金額がある。よって、会費も問題にならない。
昼姫の場合、化粧品会社からのスポンサー費として、年に600万円。ゲーム専用機のスポンサーからも似たような金額、服飾会社とも最近スポンサー契約を結んだ。
そして、昼姫はその服飾会社の服を提供して貰い、動画の配信も、そのゴスロリ服を着てプレイングしていた。
因みに、ゲームの始まる前と終了後に少しずつ、服装を披露する時間を設けるようになった。
「可愛い服装だね、昼姫さん」
卯月さんは、ちゃんと昼姫を褒めてくれた。
対して、『Kichiku』と『Victory』はコソコソッとガン見して来て、イメージが良くない。
『プリさん』と『Venues』さんは「服飾関係のスポンサー、羨まし」等と言っていて。
夕姫は、「何故、昼姫姉さんの方に先に!?」等と不満を述べていたけれど、貴女がゴスロリ服は洒落にならないじゃない、と云うのがアタシの本音だ。
「若いって良いわねぇ。若いと云う、ただそれだけの事で価値があるわ」
そう言う『プリさん』も、所謂『美魔女』だ。年齢は訊けないし、想像も付かないが、何故か明らかに歳を重ねているイメージを見る者に与える。
「ゲーム内に存在する、『若返りの秘薬』、現実にもあれば良いのに」
『Venues』さんもそう言うが、まだまだ十分に美しい。
当初、その『若返りの秘薬』の作成に初めて成功した卯月さんでも、現実で作れるかどうかは謎、だそうよ。
「『衰えと戦う基礎化粧品』でしたら、私のスポンサー会社でも取り扱っていますので、安く提供しましょうか?」
「ありがとう、昼姫ちゃん。
ええ。是非にお願いするわ」
「私も!私の分もお願い、昼姫ちゃん!」
『Venues』さんも話に乗っかって来るので、昼姫は「はい、分かりました」と安請け合いした。
後に、『魔女は歳を取っても美しい』を謳い文句に、二人ともCM出演するのだけれど、結局は元々美しいから通用する謳い文句なのよね。
でも、二人は化粧品の効果を確かに受けていると宣言しており、『Kichiku』と『Victory』は「そんな効果は無い」と言うから、相手されないのよね。
『プリさん』も『Venues』さんも二人に釣り合う年齢で美女なのだから、本気で狙えば良いのに。
尚、卯月さんは先日、昼姫をカラオケに誘い、ラブソングで昼姫をメロメロにしていた。……アタシにもちょっと効いた事は内緒だ。
よって、二人は今日、同じ曲をシンクロして鼻歌を口遊み、ゲームを進めていた。
曲順は、先日、卯月さんが歌った通りだ。
昼姫は、鼻歌程度なら大丈夫だけど、『歌声を出すコツ』を心得ていないので、ほぼほぼ歌えないのだ。
まぁ、アタシが呪いを掛ける前までは、少しだけ歌えていたのだけれどね~、下手なりに。
『コツ』とかよりも、喉の弱体化の方が歌えなくなった原因として大きいかしら?
音楽を聴くのは好きなんだけどねぇ~。歌えなくなって、歌の好みが変わってしまったけれども。
ホントに、何の因果なのかしらね。
そんな二人が、最近行っているのが、『同倍率トレード』。トレード倍率の限界、『4倍』同士でのトレードを行っている。
勿論、毎回お互いに『4倍』同士でトレード出来ない事もあるのだけれど。
なるべく、ソレに近い倍率でトレードを行っている。
特に卯月さんは、『品種改良の鬼』と化しているから、高い倍率でのトレードも成立し易いのよねぇ。
それこそ、『プリさん』の順位を脅かす事もあるのだけれど、どうやら『プリさん』はキーとなるトレードを秘しているから、イザって時にはそのトレードをされる。
それで開く点差が大きくて、中々『プリさん』を追い抜けない。
かと言って、違う回のゲームで高順位を狙おうにも、この老師・岡本道場の面子が参加しているから、トレードで優位に立ち易く、しかも世界ランキングへの影響も大きい。
つまるところ、同じ回のゲームに参加して、実力で追い抜かないと、世界ランキングの逆転は難しい。
因みに、夕姫へのトレードの優遇も行なっていて、夕姫は実力以上の順位を叩き出している。
と云うか、チームとしての実力が高いだけなのよねぇ、結局のところ。
──で、現実で出来るか否かは全くの別問題として、現在では失われている『ダマスカス鋼』の生成にも、卯月さんは成功していて。
チーム・老師・岡本道場の中でも、昼姫、卯月さん、夕姫の三人は、今のところ2軍だけれど、ほぼ別チームを組んでプレイングしていると言っても過言ではない。
率いているのは、主に卯月さん。別に、他の面子と協力しない訳では無いけれど、優遇トレードは三人の間で行う、と云う程度の区別はしている。
その回、昼姫と卯月さんは『プリさん』の成績を上回った。
「中々やるじゃない」
当の『プリさん』は、世界ランキング1位と云う王者の余裕を見せた。
流石に、一回では世界ランキングでの逆転は出来ない。
けれど。
「老師の指導通り、私も世界ランキング1位と云う座に君臨しているのも、あと僅かな時間なのかも知れないわねぇ。
だからと云って、簡単に勝ちは譲りはしないけれど!
陥落したら、私も指導者の道を進もうかしら?」
「でしたら、是非、夕姫に指導を!」
夕姫は、今回も善戦はしたものの、順位は5位にも入れていない。10位以内には入っているけれども。
「普通、こんな短期間でランキング10位以内に当たり前に入って来るなんて、中々出来ないことなのだけれどねぇ……」
正直、夕姫はチーム・老師・岡本道場の支援があってこそだと思われる。
『Kichiku』さんと『Victory』さんは当たり前に夕姫に全力優遇しているけれど。
うん。勝因はソコね。でも、二人とも順位を夕姫に譲るつもりは無いみたいだけれど。
夕姫にも頑張って貰わなくちゃ。何しろ、イザと云う時の日本代表は、恐らく全員、このチーム・老師・岡本道場から出るのだからね!