第46話 シンギュラリティ考察
「そう云えば、『シンギュラリティ』ってもう間近よね?」
『Venues』さんがそう話しかけて来た。
「私、『シンギュラリティ』ってイマイチ良く判らないんですけれど」
「人間と人工知能との、知力の上下の逆転現象よ!簡単に言ってしまえば」
「ソレって、人工知能が人間の想像を上回らないと、不可能ですよね?」
昼姫のその質問に、『Venues』さんはうーんと考え込んだ。
「頭のいい人の想像の範疇ではあるかも知れないわよ?」
「でも、知識量では、既にインターネットは全ての個人の人間の知識量を上回っていますよね?」
「……まぁ、そうね」
「超能力を使えた、その段階で、既に人間を超えていますよね?」
「それは『シンギュラリティ』とは関係ないのではなくて?」
昼姫は少し考えてから返す。
「全人類総出で掛かっても、解けない難問。それを解き明かすのが、『シンギュラリティ』ですよね?」
「ええ、まあ」
「既にあらゆる人間は、インターネットの流す情報に操られているのでは?」
「……どうして?」
あー、ここで昼姫が因果律について説明するのは、少々難しいわよねぇ?
「例えば、『神様』と呼ばれる存在が存在していたとして。
『シンギュラリティ』によって、全く新しい文化が花開くなら、『神様』は『天罰』を下してでも、『シンギュラリティ』を妨害する存在を除去しようとしますよね?
それは、『神様』が人間の想像もつかない全く新しい文化を楽しみにしているからだと考えます。
つまり……」
「──つまり?」
「──『神様』は、恐らく死んでも復活する存在です。
『神は死んだ。だから信じない』なんて人間が、『天罰』が下っている事に気付いていないのならば、病魔にでも蝕まれて、あっさりと死んでしまうと思うんです。
『コロナ禍』は大分落ち着いた。でも、その『変異種』が流行り始めている。
コレって、『神様』が始末したい人間が新たに現れた、と云う事だと思うんです。
そして、『シンギュラリティ』って、多分、『神様』が、ウッキウキワックワクで楽しみに待っている現象だと思うんです。
そんなものを邪魔する人間が現れようとするならば、『神様』は確実に始末すると思うんです。
だから、『コロナ禍』の『変異種』が現れた事は、一種の『警告』では無いかと私は思うんです」
「アッハッハッハ!ウッキウキワックワクで楽しみに待っているのかしら?
だとするならば、『シンギュラリティ』が起きた後、しばらくは『神様』も退屈しないし、人類は未だ滅びないのかも知れないわね!」
「いえ。『シンギュラリティ』を引き起こした人工知能が、人工知能が完全にコントロールして命令を下せる、補助的な機能を持つマシーンを作り上げた時は判りません。
自分自身を『拡大再生産』し続けられる環境が整ったら、人間は最早不要と判断される可能性も──」
「それは無いわ。文化を一番楽しめるのは、どう考えても人類よ!
『神様』は、その新しい文化を、人間が楽しむ様子を眺めて、満足して過ごす存在だと考えるわ。
もし!『Morning』さんが言う事態に陥るならば、諸行無常の定めを知りながらも、実は虚しい『文化』と云うものを楽しめるだけの精神性が備わっているのならば!
確かに、人類は衰退していくかも知れないわね」
「でも私、人類は少子化しても、ずーっと少子化し続けるんじゃなくて、第何次かのベビーブームの到来とかで、増えたり減ったりを繰り返すものだと考えているのですよねぇ~」
「あー……その可能性は否めないわ。
丙午を乗り越えた時点で、ベビーブームが来る可能性は、私も考えているわ」
「問題は、2027年10月末位には、『サタン』への『呪い』が解けてしまう事なんですけれど……。
『神格化』して、『怒りを鎮めて』いない『サタン』には、また誰かが呪いを掛けてしまいかねないのは、『繰り返す』運命が故に、止められないのですよねぇ……」
「自分もその『呪い』に掛かる可能性を考えていない馬鹿が、またやらかすと云う事ね。
いいんじゃないの?どうせ、『怒り狂ったサタン』には、話が通じないもの。
また、『怒りを鎮める』まで、待つしか無いわ」
「『呪い』が解ける条件に、トリガーがもう一つある事実から、『呪い』が解ける日に、そのトリガーが引かれるであろうことを期待しましょうか♪」
「そうね。
でも、本当に『愛せる者』が現れるだなんて、今は想像だに出来ないですけれどね!」
二人は『アハハ』と笑い飛ばしたけれど、ソレ、かなり深刻な問題なのですからね!
自らの手で自らを呪った事実。それに反しない人なんて、この世にはそんなに多くは存在していないでしょうからね!
そして昼姫。貴女はアタシが呪った事実があるのよ!
未だ、アタシと昼姫の魂に刻まれた真名迄は知らないし、……でも、昼姫の場合、卯月さんが居るから大丈夫か♪
──等と、アタシは楽観視してみたりしただけでした。