第40話 若者に政治を!
「いやぁ~、『全偉業の条件』、探し切れないなぁ……。
もしかしたら、新しい条件を見付けて成し遂げたら、自動的に生成される可能性も否めないから、これ以上は無理だよぉ~」
ある日、『Kichiku』さんがそう言って音を上げた。
「『通算で現在までに発見されている全偉業の達成』なんてトロフィーを得たから、ソレで終了か?!と思った直後に、新しい偉業の発見、って。
コレ、AIの限界まで達成しないと無理だよぉ~」
「『AIの限界』って。徐々に進化し続けているAIに、限界があるのなら、ソコへの到達こそが世界の終わりだよ」
「異惑星の発掘とかすれば、その限界も遥か先になるしな。
それこそ、480万年掛かるかも知れないし、もしも異恒星系惑星間で『TatS』のようなトレードが既に行われているとするならば──
ソコに地球が加わる事は、大きな意義があるかも知れないぞ!」
「ソレには超光速航行の技術が必要だし、ソレが出来たとしても、その速度なら石ころ一つにぶつかるだけで大破だぜ?」
「ソレが成し遂げられるのは、『AIの世界』になってからかも知れないなぁ……」
そんな会話を交わしながらも、『Kichiku』と『Victory』の『TatS』の操作は緩まない。
「よっ、はっ、とう!」
夕姫は夕姫で、適当な掛け声を掛けながら操作している。
「ほほぅ……。2位まで上がって来たじゃない、『AI』さん。
でも、そんなに簡単に負ける私じゃないわよ?」
『プリさん』もそんな事を呟いている。
昼姫と卯月は、自動では無いトレードで、お互いにメッセージ性のあるトレードをして、密かにイチャついている。
「フフフ……『King』!貴方はもっと順位を下げなさいな!」
『Venues』は、『King』の順位を下げる事に執念を燃やしながら、他にも他国のプレイヤーの台頭が無いものか、チェックに余念が無い。
少なくともこの老師・岡本道場が正常に機能している内は、『TatS』に於いて日本の負けは無さそうだった。
だが、国別で代表を出場させた場合はどうであろう?
社会主義国は、『BRICS』と云う同盟状態にある。
対して民主主義国はどうであろう?
この『TatS』と云うゲームは、より多くのプレイヤー間での優遇が、一つの大きな鍵である。
私利私欲に走れば、当然、負ける。
『優遇されて当然』と考えて、優遇に対して優遇で返さないのであれば、日本だけが優位に立ち、勝てるとは限らない。
イジメ体質の強い日本では、サタンが容易に量産される。だからこそ、イジメられると判っているだろうに、日本人はイジメを辞めない。
優遇に対して冷遇で向かわれたら、流石に日本は勝てない。
だが、だからこそ、日本は技術を追求し、『偉業』と云うトロフィーでの勝ち目を狙えるには狙える。
問題は、『米ファースト』を追求する米国にもある。
何もかもが『米ファースト』でなければ気が済まないと云うのであれば、それはただ単なる我儘である。
それこそ、『強欲』の魔王『マモン』である。
米国は魔王を正しく魔王たるべく大統領に据えるつもりか?
対立する候補が言い間違い多発の高齢者と云うのも、おかしな話である。
もっと、若い人に政治を任せられないか?!
もっと、エネルギーのある若者を!
それは、米国に限った話では無い。日本とてそうなのだ。
もっと、エネルギーのある若者に政治を!……等と、私・朝姫は思う訳であります。