第33話 『大罪』と『犯罪』
ある瞬間、ふと昼姫は気付いた。
「なぁんだ、皆、罪を犯したいだけじゃないの」
『七つの大罪』は、あの聖人が全部自分一人で背負い込むと意気込んだが、それが故に、『大罪』と云えど赦される事になっているのならば、『罪を犯して』欲望を満たしたい。
そんな人間のしょうもない真実に気付いた昼姫は、自分だけは二度と犯罪を犯したくないと思っていた。
受けた罰が、相当に苦しかったせいもある。
ただ、一人で怒り狂って熱を出して寝込んでも、大罪になるらしい。怒り狂って、人生も狂う、と云う訳だ。
強欲たる国々へ、天罰よ、下れ!と思う次第である。
それこそ、ハンマーでも頭に下ればいい。
そもそも、この『Trade around the Star』と云うゲームに於ける地球の立ち位置は、『バランス型惑星』と云った立ち位置だが、未だ惑星間トレードにも至っていない。
謂わば、未熟なままで終わりかねない、不安定な惑星なのである。
コレには、サタンやルシファーを始めとした七大魔王や、他の魔王の存在を予言した者の罪であり、それに逆らおうともしない者たちの独占権益である。
そう。地球は、『宗教型惑星』の側面も持っているのである。
相反する宗教の対立が、基督が釈迦を『ルシファー』と見做し、釈迦は延々と地球の延命措置に死後も暗躍しているのである。
黒っぽい襤褸い衣を纏った、旅人のような姿で。
「『天上天下唯我独尊』、かぁ……。
むしろ、『天上天下皆平等尊』の方が、よっぽど正解に近いと思うんだけどなぁ」
但し、その尊さを自ら吐き捨てる者が居る。──犯罪者達だ。
罪を犯した者を『尊い』等と思うのは、狂信者達だけだ。
或いは、国家そのものが一種の狂信者と化している国が、戦争等と愚かな行いを引き起こすのだ。
今回こそは。今回こそは、『丙午の破滅』と云う一つの脅威から逃れられるかも知れないと思う。
そして、『シンギュラリティ』を引き起こし、例えコンピューターによる管理社会になったとしても、地球も『TatS』と云うゲーム世界の管理下に入れるかも知れない。
最低でも3000年の繁栄。『バランス型惑星』は、平均よりピーク寿命が長い傾向にある。
初心者が陥りがちな、『自星での勝利点の獲得』に走っており、物理法則に従う限り、他の生命体の存在する惑星との行き来が出来ない状態。
『法則』、特に『物理法則』の思い込みの力は非常に強い。故に、他星からの輸送船も、故障しがちだ。
だからこそ、地球は他の知的他惑星人との確かな『接触』の証拠が無い。少なくとも、地球と他惑星とのトレードを行ったデータは、公開されている限り、存在しない。
第2絶対性理論。ココに、粒子の速度の最大値は、『タキオン』と云う斥力子の場合、光速を遥かに超えると断言しよう。
『タキオン』の加工は、最低速度が光速であるが故に、出来ない。──本当にそうか?
少なくとも、『全知全能神』には、『タキオンの加工技術』と云う能力がある筈だ。
その能力だけを拝借すれば、不可能では無い筈だ。
──閑話休題。
昼姫は未だ尚、上位ランキングを狙っており、『Kichiku』や『Victory』に甘えて、卯月を誑かして、技術を盗もうとしていた。
その結果、遂に老師・岡本はキレて、『道場内での男女間のイチャ付き禁止令』を発令した。
但し、卯月に限って言えば、昼姫は道場外で卯月とイチャ付いて技術を教わろうとした。
結果、昼姫は卯月に襲われて、ソレが二人の初めての経験となった。
事後、卯月は土下座して昼姫に謝罪し、警察に訴える事は回避させられた。
と云うか、昼姫は卯月さんから『襲われたい願望』があったみたいで、その気持ちをスッキリとさせられて、気持ち良く感じていたのだから、魔王確定よねぇ……。
兎も角、昼姫は卯月さんから彼の知る限り全ての『TatS』のコツを教わった。
尚、卯月が本当に本気の、4ウィンドウ高性能デスクトップパソコンでのプレイングに迄は、昼姫は辿り着かないのであった。
故に、何故昼姫は、ベスト10にギリギリ入って、卯月が遂に『Victory』さんを追い落とし、世界ランキング3位に入り込んだのかを、昼姫は理解していなかった。