第32話 偉業の全条件
『白薔薇対戦』以降、老師・岡本は全ての弟子に指示を出した。
「どんなに下らなくても構わない、偉業の『トロフィー』の全条件を、調べ尽くすぞ!」
「「「「「応!!」」」」」
因みに、『白薔薇対戦』の白は、真珠の色が由来だ。
それでも、昼姫はトップに届かなかった。辛うじて卯月にも及ばず、第6位だ。
だが、それだけの好成績が続くと、世界ランキングにも影響がある。
今、昼姫は世界ランキング13位にまで上げて来ている。
そして、実は昼姫は、老師・岡本道場の事をある人に話して、「紹介して欲しい!」と頼まれている人が居る。
その人物を、どのタイミングで、どのように紹介するのかに悩んでいた。
その話は、当然、卯月には相談しているし、岡本にも『いずれこの道場を紹介したい人が居ます』程度には話を通してある。
問題は、彼女が今の昼姫と同等か、若い分だけ美人だと云う点にある。
『Kichiku』と『Victory』は喜ぶだろう。
卯月は、前提条件として、かなり重い約束をしているので、そう簡単には奪われない自信が昼姫にはある。
歳は、女性が最も美しいと言われる18歳。
ただ、彼女は『Kichiku』や『Victory』を玩ぶ事はあっても、付き合ったりする事は無いと思っている。
いや、『Kichiku』や『Victory』は、『プロeスポーツプレイヤー』として、日本では屈指の稼ぎを得ている以上、その『玉の輿』に乗る可能性は考えられるが……。
男は、稼ぐ事さえ出来れば、何歳になっても伴侶を求める事が出来るのだ。
女性は、求められる人は極端に求められるけど、求められない人は徹底的に求められない。
尤も、お互いに唯一人の妥協では無い伴侶が居れば、ソレが最も幸せだとは思うが。
ただ、何処に行っても、『あの女性以外、眼中に無い』と云う、一見男らしいが、場所が変われば、他の『あの女性以外、眼中に無い』と云う男は、事情を知らぬ女性には好かれるらしい。
事情を知ってみれば、何処に行っても、『No.1』の女性だけを追い求める、強欲な男なのだが。
否、色欲に狂っているのかも知れない。
──『ロリコン』の悪名を貰ってまで、彼女が求められるだろうか?
少なくとも『Kichiku』と『Victory』の二人は、彼女が道場に来れば、相当に優遇されるだろう。
──いっそのこと、恋人を連れ添って来て貰おうか?
昼姫には、それはグッド・アイディアに思えた。
だが、その時、彼女の恋人は優遇されるのか、邪魔されるのか。
昼姫は、人間性の見所ね、等と思って、近い内に彼女にこの道場を紹介しようと決めた。