第24話 『トロフィー』
老師・岡本道場での対戦の結果は、以下の通り。
1位『Primula』
2位『Kichiku』
3位『Victory』
4位『TAO』
……
6位『Morning』
7位『Venues』
……
…………
………………
13位『King』
当初、『Morning』こと昼姫はもっと高い順位を取る可能性があった。
だが、最終盤に於いて、倍率の低い高速のオートトレードを嫌った結果が、順位に表れた。
辛うじて『King』が入り込んでいたこの試合で、『Venues』は『King』を抑え込む為の戦略を練っていたが為に、『Morning』に引けを取った。
「十分、立派な成績よ、『Morning』さん」
「でも、ソレは『石油型惑星』を引いたからであって……」
「偉業のトロフィー、幾つ取った?」
「えっと……ソレは……」
昼姫は頭で考え、指を折って数えた。
「――『産業革命』、『奴隷解放宣言』、『非核三原則の宣言』、『プラチナの加工』……。四つですね」
「四つもトロフィー引いた割には、点数が低いわよ!
トレードは、鮮度が命。時には、低倍率で高速回転させないと、世界ランキングでベスト5以内には入らせないわ!」
「はい!特に最終盤ですね!
低倍率でも、儲けは儲け。ソレを、身を以て知らしめて頂けました!」
「要はな、高倍率のトレードって、互いに自星にとっての高得点商材を、自星の特産物で勝利点の低い商材とを交換するしか成り立たんのよ。
俺は『Morning』さんは強くなると思うね!」
「右に同じく」
『Victory』と『Kichiku』とが揃ってそう言う。
それに対して、『Primula』と『Venues』とは態度が冷ややかだ。
「二人揃って、『Morning』さんを露骨に優遇しておいて、よく言うわ。
しかもその上で高順位を叩き出すとか、何て変態プレイをしたら、そんな結果を出せるのよ?」
「自主的に下心丸見えで老師に弟子入りした人って、やっぱ何か違うわぁ~」
『Primula』はあからさまに罵っていたが、『Venues』は嫌味を言った。
それに気付かぬ二人ではない。一度、顔を見合わせて、反論する。
「日頃の行い?」
「初心者に優遇した俺たち、善き人!」
対する女性陣は、ため息を吐いてこう言い返す。
「良く言うわよ、『魔王』のクセに!」
「ハイハイ、言い分は判りました、『鬼畜魔王様』」
『魔王』の音の響きに、昼姫もアタシも、ドキッとした。
何せ、「『魔王』として転生させる!」と神様から言われた昼姫と、その裏側に潜むアタシの人格も朱に染まって『魔王化』したのだから。
そこに、老師・岡本がこう言い放つ。
「初心者であろうと無かろうと、トレードで優遇してくれたプレイヤーに対しては、優遇し返したくなるものだよ。
心理学に基づけば、男性陣二人のプレイングは間違いじゃない。
そして、石油のトレードを優遇してくれたら、幾らでも戦略・戦術は選べる。
『Morning』さんは、下手に出過ぎて、勝利を譲ってしまったね。
もうちょっと、強気のトレードをしても良いと、儂は思うよ」
やはり、老師・岡本の意見は参考になる。
――等と昼姫は思っていたけれど、優遇してくれるプレイヤーに優遇するのは、昼姫の性分として仕方ないのかも知れなかった。