第23話 『上級者』の壁
いざ、ゲームが始まってしまうと、今回は昼姫は『石油型惑星』を引いて、引きはやや有利と思われた。
しかし、進行してゆくと。
「ヤッバイ!『Morning』さんの独り舞台になりそう!
この、『Kichuku』と『Victory』め!『Morning』さんを優遇してのトレードし過ぎ!」
30分30人ワンゲームは、立派に世界ランキングの計上に値する、公式ルールだった。
だが、トップをひた走る四人中二人が『Morning』一人を優遇し、平気で『7対2のオートトレード』に乗るのだった。
「何で?!二人が優遇する程度じゃ、大きな差は出ない筈なのに!」
「『プリさん』、『Kichiku』さんが『人材型惑星』を引いて、奴隷を『Morning』さんに大勢トレードしてます!」
「クッ……!
しかも何で?!『Morning』さんの星、『石油型惑星』なのに、観光立国に成功している!」
当の昼姫は、へぇー、よくそんなに観察していられる余裕があるなぁ……。と思っていたが、オートトレードで大きな動きがあった。
それは、石油の『買い占め』にも近い、『通貨作成型惑星』を引いた、流石は『プリさん』の面目躍如であった。
「そうは問屋が卸しません……でも、このトレード倍率、条件美味しいなぁ……」
本来は『通貨作成型惑星』であった惑星で、食糧生産を行い、現金・食糧をタネにしたトレードだった。
恐らく、転売行為にも及んでいるのだろうが、条件的に『プリさん』の提示した条件の方が美味しい。
「でも、この条件に乗ったら、私は負けるんだろうなぁ……。でも、いいや♪♪胸を貸して貰うつもりで、世界ランキング順通りの順位が取れれば、それで十分!」
特に『石炭』や『石油』は、文明の発展に大きく影響を与える。『プリさん』にしても苦肉の策だったが、ソコはその後の立ち回りで勝てると踏んでいたのだろう。
でも、後は食料の類を手に入れなければ、『Morning』もその人口を維持出来ない。
その後、昼姫は金品をほぼ食料の輸入に費やし、観光立国を目指しつつ、あるタイミングでのみ非常に価値が低い、『プラチナ』に手を出した。
昼姫は、最終盤でのプラチナの価値の開花を狙って、偉業と云うトロフィーを目指す。
ソレは、制限時間残り10分程度の段階で達成出来ていなければ、プラチナは全て石ころと化す。
昼姫は、『Morning』として、『初心者』と云う壁はとうに超えている。ただ、『上級者』と云う壁が、中々に達成出来ずにいた。
ソレを、昼姫は早期の『偉業』による『トロフィー』と云う得点と、今回はプラチナに賭けていた。
なので、ゲーム開始当初から、プラチナの輸入を積極的に行っていた。
そして、中盤で加工技術を昇華させて、プラチナの加工を可能とし、加工したプラチナ製品をまた高く、売買するのだ。
時間は掛かるが、勝ち点倍率にして、50倍を超える収益を得るトレードを行うのだから、得点は軽く億に届く。
皆がプラチナ製品をトレードしてくれなかったら成り立たない戦略だったが、勿論、『Victory』と『Kichiku』は一枚噛んでいる。
この場合、『Victory』と『Kichiku』の貿易利も大きい。プラチナ製品は、高い技術力の証だ。自星で生産出来ない星では、高い勝ち点となる。
尤も、トレードされなくとも、そもそもが『Morning』の星でのプラチナの勝ち点も高いものであるし、加工して商品として在庫を抱えていても、勝てる。
問題は、やはり特に上位三人とのプレイング経験値の差だった。
最終盤での逆転を図っていた昼姫だったが、ソレは皆も同じように違う何かを高い勝ち点に替えて、追随を許さない。
ただ、『Venues』は別だった。確かに最終盤での逆転を窺う目も狙っていたが、『Morning』程の高倍率ではない。
「べ、別に良いのよ。私は、王 李明にさえ負けなければ!」
「その人のアカウント名、お伺いしても?」
「シンプルに『King』よ!」
「――判りました!私も、『King』にだけは負けません!」
コレに因り、『Morning』からの冷遇と云う、強烈な一手で、名前通りに『13位』にまで『King』が沈んでしまう事は、仕方なかったのかも知れない。