第21話 不要のアドバイス
昼姫がプレイを始めた途端に、4人は静まり返った。
「え?!この操作速度で未だ333位?!
――否、想定すべき事態だったかも知れないけど、コイツは逸材だぞ!」
「はっ!コイツは驚いた!
やってるトレードの殆どがオートトレードじゃねぇか!
そうか……イチイチ条件を詰める時間すら惜しいんだな?
だとしたら、何故、老師が勝ち方を教えない!?」
4人の視線が、一瞬だけ岡本を向いて、再び昼姫のプレイングを眺め始めた。
「あ!良い条件のトレードが申し込まれました!――応答、と」
丁寧に肝心なところは昼姫が解説していた。
「は?!見間違いじゃなければ、7桁位の数の真珠が、在庫としてストックされてるんだが?!」
「この真珠は良い条件のトレードが来た時用の取って置きです!」
「『10対7トレード』で『7』の方を握って真珠をトレードに掛けろ!上手く行くと、相当に高い順位が期待出来るぜ?」
「あ、そうなんですか?
でも、『10』の方を握らせてくれるトレードも稀に来るんですよ?それも、在庫一掃するレベルで」
「ソレで未だ、世界ランキング333位?
冗談じゃない!コレは今回、トップを握る可能性があるぞ!」
「整えて、整えて、整えて……。
良し!規格が出来た!
あとは、品質毎のオートトレードの条件を……あ!産業革命だ!」
「馬鹿な!未だ開始10分を少し過ぎた位だぜ?
こ、こんな序盤で『海洋型惑星』で産業革命が起こせるのかよ!
多分、トロフィー取るぜ?他の星では未だだろ?」
「他の継続を選んだ『海洋型惑星』を操作している星では、既に起きているのではないですか?」
「否、トロフィーは、『今回から始めた惑星の中で一番』に偉業を達成した星に与えられるものなんだ。
――待てよ、この調子じゃ、もうすぐ『奴隷解放宣言』も出されるぜ!」
勿論、昼姫も『奴隷解放宣言』を既に意識している。そして――
「少し早いですけれど、『奴隷解放宣言』、しちゃいます♪♪」
昼姫がノッて来た。勿論、直後に『奴隷解放宣言』の偉業も達成する。
「『非核三原則』の宣言もやっちゃいま~す♪♪」
「馬鹿な!『惑星』単位で『非核三原則』の宣言なんて、狙うプレイヤー居ねぇだろうが!
よっぽど上位のプレイヤーが居ないと……1位、狙っちゃえるんじゃねぇの?!」
「そんなことありませんよ~。私より強いプレイヤーなんて、五万と……迄は居ないんですね。
――ん?」
昼姫は、一度覚えた違和感を無視した。そう、世界ランキング上位3名は今、昼姫のプレイングを観察している。
よって、そのゲームの結果は――
「――え?1億点越え?!え?3位!
惜しかった……のかなぁ……。
でも、初めて銅メダル貰えた♪♪
――如何でしたでしょうか?」
4人は、昼姫に何と言って指導した方が良いものやら、判らず。
「老師!アドバイス!」
「あー……ん、ンッ!
『Morning』さんや、真珠をそんなに安売りしちゃ勝てないぞな?」
「え?――でも、『7体2』のオートトレードで吐き出さないと、真珠の在庫が余っちゃいますよ?」
「「「「「『7対2』のオートトレード……」」」」」
昼姫にとっては、『海洋型惑星』をプレイする上での常識だったのだが、昼姫位のプレイングスピードが無いと、自動生産される真珠をそんなにもの数は用意出来ないものなのだ。
「あー、成る程。上位プレイヤーに嫌われる原因が判った気がするわ」
「しかも商材が真珠メインだから、言おうと用意していたアドバイスも役立たずだしな!」
その言葉に、昼姫は食いついた。
「何ですか、言おうと用意していたアドバイス、って?
訊きたいです!是非に!」
引くに引けなくなった『Kichiku』が、「あー」と発音練習をするように言い出すと、アドバイスを昼姫に授ける。
「基礎勝ち点の高い商材で『10対7トレード』の『7』の方を引くと、相手より得点を稼ぎ易くて、絶対的な得点で勝てるぞ……何て言ってもなぁ……」
「あっ!ソレ、判る気がします!
そうなんですよねぇ。魚の干物じゃ、『10対7トレード』の『10』の方を引いても、あんまり美味しくないんですよねぇ……」
予想外の新星の到来に、老師・岡本道場は想定外の盛り上がりとなるのだった。