第11話 人口問題
モンスタープレイヤーとは。
正しく判断し、早く正確に操作するプレイヤーの事を指す。
いずれの要素も、半端なレベルでは無い。
ソレだけで言ったら、『人工知能』に敵うものではない。
『人工知能』に勝てる要素があるのだとしたら、『正しく判断する』事の精度の高さ位しか、人間は敵わない。
『Trade around the Star』では、二つのパターンのトレードを、バランス良く行わなければならない。
序盤から生産できる商材の、オートトレードと云う倍率低めだけれど安定した収入に繋がるトレード。
そして、1回の利益が大きい、通常トレードとの二つだ。
昼姫が気になっていた、不自然だった5名のプレイヤー。岡本曰く、「恐らく人工知能プレイヤーだろう」との事だった。
不自然だったのは、その持ち出す通常トレードが、余りにも暴利を貪っていたからだ。
確かに、成り立てば利益は大きい。途轍もなく。
だが、通常の人間のプレイヤーから見れば、「何だ、コイツの足許を見たようなトレードは?」と思うトレードを持ち掛けられて、応じる筈が無い。
恐らくは、学習中なのだろう。将来的には脅威だ。
だからと云って、今すぐ脅威になる訳では無い。
トレードが成り立っている例を見て、その内で効率の良いトレードばかりを真似してトレードしていれば、「アイツは人の足許を見てトレードしている」と見られる。
昼姫も一度、陥ったミスだ。10対7のトレードで『10』の方ばかりを取れば、確かに儲かるかも知れないが、他は面白くない。
よって、ソレラのトレードが次々と断られてゆく。
8対8位のトレードを落としどころとすれば、安定して稼げるが、偶に一発ずつ、大きな10対7トレードでもしなければ、上位には食い込めない。
上手いプレイヤーは、トレードの落としどころが絶妙なのだ。
反感も買わず、利益を上げ、暴利を貪らない。
そして、地味に序盤に設定したオートトレードが、後半になって効いて来る。
このゲーム、全惑星に共通の通貨が無い、と云うのが、中々にネックになって来る。
即ち、金を得れば勝ちでは無い。財産と財産の、物々交換だ。
加工貿易が儲かるのは当然の事とは言え、惑星タイプによっては、効率の良し悪しがある。
海を始めとする水が少ない惑星では、人口の維持が大変な為、人口の勝利ポイントが高い。
だが、人口を維持する為には、食糧と水が必須となって来る。
供給が間に合わなくなった時には、既に手遅れだ。
そのミスは、昼姫も経験している。
勝利ポイントとしても高い食糧や水を買い漁り、それを消耗する事で人口を維持出来る。
即ち、勝利ポイントをその惑星の住人は飲み食いしてしまうのだ。
だが、人口を確保できねば、惑星の採掘・加工等が出来ない。
商材を手に入れて、終盤で一気に人口を増やす。そうすれば、食糧や水等の消費が抑えられて人口を確保できる。
昼姫の弱点は、一回の対戦で決着が着く、大会型の対戦に慣れていないところにある。
幸いにも、最初に海洋系惑星を引いたが故に、長期に渡る対戦のコツは心得ている。
昼姫には、岡本と云う師が居たが故に、的確なアドバイスが得られる。
そして、未だ昼姫は、対戦相手に合わせたオートトレードの設定と云うのが、イマイチ出来ていない。
オートトレードとは、例えば、食料系海産物を10キロ出すから、銀を10キロ以上と云う条件のトレードがあったら、自動的にトレードしてしまう、と云う形のものだ。
稀に、当初の予定の二倍以上の倍率でオートトレードが成立してしまう、と云う事がある。
昼姫が勝つパターンは、そう云った、二倍以上の効率でオートトレードが成立してしまっていた場合等に依る時が多かった。
だが、食糧は惑星の価値として、勝利点が高い傾向がある。
食料とて、人間が居なければ採取してくれないのだ。
海洋系惑星では、食料系海産物より、真珠の加工貿易の為の金・銀・プラチナや、食糧系炭水化物の方が価値が高い。
そして、オートトレードの条件は、幾つでも設定しておける。まぁ、現実問題、7~9パターン位を設定するのが、効率として良さげだが。
この際、条件がより良いトレードがあったら、ソチラが優先される。
故に、低倍率のトレードをする事が、時として有利な場合がある。
人材型惑星なんぞに於いては、人口が勝ち点として低く、増やす必要が余り無いが、ある程度まで、自動的に増えて行く。
ソコで成立するのが、『奴隷貿易』である。
勿論、最終盤に於いては『奴隷解放宣言』する事が、奴隷を買い取った側の惑星で重要な一手となるのだが。
あと、余りに惑星の管理が甘いと、『人類の移民』状態が起きる。即ち、対価無しで、人口が近くの他の惑星に移るのだ。
勝ち点が勝手に移ってゆくのだ。生半可な損害では無い。
幸い、昼姫は人類を手厚く護っているので、『人類の移民』状態には陥った事が無い。
要は、『衣食住を寄越せ』と云う話である。
まぁ、人類を手厚く護り過ぎて、人類が好き勝手をして、『核戦争』状態になるのが、最悪のパターンだ。
ほぼ、勝ち点の全てが失われ、僅かに残った勝ち点も、人類が絶滅しているが故にトレード出来ず、採取・生産も出来ず、詰む。
この場合、勝利する事はまずあり得ない。
故に、『相対性理論』に人類に気付かせない事が、最善の対策となる。
だが、いつかは解明される。解明された場合、時間制限が来るか、核戦争が先かと云う問題になる。
因みに、核戦争で滅んだ惑星には、『宙賊型惑星』からを主とした宇宙海賊が襲い掛かって、残っていた僅かな勝ち点を無抵抗で奪われてしまう、と云う場合がある。
勝ち得なくて、当然でしょ?