聖櫃対策

第35話 聖櫃対策

「さて。ココで問題よ。

 日本語で、『悪魔』も『魔王』も濁っていない。でも、英語にすると、両方『Devil』。濁るの。

 英語を定めたのが『唯一神』だとするならば、英語圏のキ〇〇ト教徒は、全て『サタン』信者よ。

 しかも、『サタン』も『ルシファー』も濁っていない。

 濁らないのは、七大魔王では、他に『マモン』。

 逆に、濁るのは『リヴァイアサン』『ベルゼブブ』『ベルフェゴール』『アスモデウス』。

 さぁて。『ベルゼブブの魔女王』が『ルシファー』に対して向けた『殺気』が『コロナ禍』の原因の一つと言って、どれだけの人が信じるかしら?」

「もう、『ベルゼブブ』は無視しようぜ。確かに目障りだが、もう視界にも入れたくない」

「確かにそうね。

 自ら美しくなろうと努力する気配も無し、その割に、あの阿呆を呪い、『殺気』まで向けた。

 正しく、『蝿の王』でしょうからね。

 『蛆虫』と思って扱っていたのが『氏神様』だと、恐らく理解してもいないわ」

「アイツも『気の毒』だな。その『毒』が、一体、何万人を殺したのやら……」

「恐らく、『億』に届くでしょうよ、あの『毒』の犠牲者は。

 いっそ、『怒り狂って』貰えれば、呪いも発動するでしょうに」

「『頭が悪い』のは確かだから、あり得るな。

 むしろ、癇癪起こしてそうな気がする」

「気が済んで、『気持ち良かった』とか、『気持ち悪い』事を考えてもいそうね。

 宗教は『狂気』だけれど、その中には『真実の欠片』が含まれている。

 ソレを考えずに、頭の『良し悪し』を論ずるのは滑稽でしか無いわ」

「面白いよな。『悪い』事をして、『気持ち良く』なる。『独り善がり』でしかねぇ、ってのな!

 そもそもが、『良し悪し』の基準を決める事が、『傲慢』に過ぎるってこと、気付いていやがらなかったのかも知れねぇな」

「大昔の人物だから、歴史を変える訳にはいかないし、しかも『聖人』認定されているから、『仮初の常世』から干渉する訳にもいかない。

 でも!『穢れ』の大元は、『聖櫃せいひつ』が破壊された事で広まった、ふるい『ばい菌』である可能性は高いわ。

 だけど――そうね。『聖櫃』が破壊される前に、『聖櫃』を回収して封印しておく事は、根本的な解決策になり得るかも知れないわね」

「だが、どの時点だ?

 その時点に回収に向かわないと、病魔は止められないぜ?」

 隼那は、その問い掛けに応じず、別の話題を口にする。

「……日本の『神道』って、縁起の悪い存在に対して、『神』の仲間入りを認めるから、どうかその災厄を齎さないで下さいと、願い事を叶える存在に昇華させたものなのかも知れないわね」

「あの阿呆は――何だよ、尻尾の切れた『龍神』かよ。

 ならば俺も、尻尾の切れた『強神』かよ!」

「と、同時に、濁した『教師』でもあるのかもね。

 ――恭次。あなた、責任は取れるの?」

「知らねーよ!つーか、名前にそこまでの影響力があるのならば、昔の日本みたいに『改名』する元服を――成人式に執り行って欲しいよ!」

「成人式を終えたから、大人になった、とは限らないけどね。でも、普通に成長している人にとっては、その位の時期なんでしょうね。

 改名だけだったら、出来るわよ?縁起が悪いとか理由を付けて。

 でも、あなたが望む名前なんてあるの?」

「苗字は『緋神』でいいとして……子供なんざ、増やさずに、俺が『善徳』を名乗るとか、か?」

「ああ、その手があったわね。

 じゃあ、この一件が落ち着いたら、役所に手続きに行きましょう。

 それはそれとして、ね。

 4年前に遡って、聖櫃を回収に向かいましょう!」

「やはり4年前かよ。

 4年前に一体、何があったんだ?」

「晒してはならない作品を晒した、晒してはならない情報を晒した。ただそれだけだと思うのだけれどもねぇ」

 二人はそれだけ話すと、プレッシャーを感じてそれ以上は言わなかった。