第17話 正義の貫き方
露と日本が戦っている間。
中は台と。朝は韓と戦闘状態にあった。
いずれも、地元のキラーチーム同士の小競り合いだった。
だが、いずれも事実上の戦争状態は、七日間限りだった。
クルセイダーに関して言えば、バチカン市国の本部の総司令官から、事実上の戦争状態は七日間限りを以て終息を、と云う命令が下された。
各支部のリーダーに伝令が行き渡り、各リーダーが事実上の戦争状態の破棄を、と云う指示を出し――大いに反発が生じた。
よって、『クルセイダー』から脱退し、野盗の類と化した者が続出した。
それぞれの国が受けた被害と比べて、攻め立てて来た側の被害が余りにも小さく、ここで妥協しては国そのものが舐められる、と云う言い訳で。
実際には、レイプに嵌まり込んだ者が、その快楽から逃れられなくなっただけだった。
よって、それらの者たちは除名処分を受けたが、その処分を気にする素振りすら見せなかった。
コレに関しては、総司令官から『綱紀粛正!』の強い言葉が発せられたが、除名したが為に、ソレ以上の罰を与えられなかった。
この際、最大の被害は、多くの戦闘用サイコソフトであった。
幸い、恋人・女房の居る者たちはそれらのレイプ行為には同行しなかった。
だから、『クルセイダー』では脱退者に対する追跡が執拗であったし、矢鱈と攻撃的であった。
「そう云う奴らがいるからこそ、俺たちって『キラーチーム』なんて総称を与えられているんだよなぁ、不本意な事に」
その事態に不機嫌になるのが恭次であった。
ならず者たちを管理する立場にある。だからこそ、脱退されたら、その始末に苦労するのだ。
「でも、今は未だ北海道が奪われてもいないし、大規模な損害も無い。今はそのことを喜びましょう」
「黒い雨は降ったけどな!
朝に塩、だよ。ホントに」
「コレで米の政府から日本が見捨てられたら、私たちも全員、『神風特攻』ね」
「ああ。俺一人で、千人は殺す!」
「向こうの国からしたら、雀の涙程の人数ね」
「『コレラ亜種』の方がよっぽど大勢の人を殺している、かぁ……」
一騎当千でも敵わない。その事実に、気が遠くなりそうな気がする。
「――食糧攻め、ってのはどうかなぁ?」
「アチラさんの生産力を考えたら、現実的では無いわね」
「あーあ、あの三ヵ国に蝗でも襲い掛かってくれないものかねぇ……」
「朝中露の三ヵ国?」
「そう」
「楓ちゃんに、そう云うサイコソフトを作れないものか、確認してみましょうか!」
恭次は天井を見上げてからこう言った。
「そうだな。結局のところ、アイツラが一番頼りになるんだよな!
いっそのこと、チームに入って欲しいものだが……」
「ソレは無理でしょう?『正義』の貫き方が、私たちとは違い過ぎるもの」
「だなぁ……」
これは、協力を頼む件についても無駄足になりそうだなと思いながら、恭次は隼那と共にテレポートした。