偽物の正義

第7話 偽物の正義

 『クルセイダー』が日本で幅を利かせている反面、『反クルセイダー派』のキラーチームも存在していた。

 『戦いに勝とうが、戦っている時点で正義では無い』と主張する『クルセイダー』に対して、『我こそが正義』と名乗るキラーチームも居た。

 だが、ある共通点を以て、どちらも正義では無かった。――即ち、犯罪に手を染めてまで稼いでいる、と云う点については。

 コレに関しては、隼那も恭次も頭を悩ませていて、体質改善に努めていた。

 その一環が、『Swan』による治療である。

 3000万円と云う金額については、一見高いように思われるが、例えば癌の治療で、重度の人は、その以上の治療費を支払って、それでも完治しないと云う可能性もある。

 『クルセイダー』に依頼した方が、安価で確実に治るのである。

 コレに関しては、『クルセイダー』は大きな病院と取り引きして、契約を結んでいる。

 病院側の取り分が1000万円。だから、成り立っている。

 肝心の犯罪による収入は、少しずつ減らし、近い将来に『ゼロ』を目指している。

 例えば、店舗に於ける護衛の配置。

 例えば、危険性の低いサイコソフトの販売。

 等々、色々と商売には手を広げているのだ。

 そして、遂に日本では『サイコソフトの利用に関する免許制度を定める法律』が施行された。

 『Gungnir』や『Excalibur』等のサイコソフトに関しては、利用どころか所持すら、法に反する行為となった。

 だが、『クルセイダー』にとっては、手放す訳にはいかないサイコソフトである。

 当然、その取り締まりにも従っていない。

 ましてや、露による北海道侵攻の可能性のある現在、特に北海道支部やその中心たる札幌支部では、ひたむきにその存在を隠した。

 『Gungnir』は、核ミサイルの打ち落としの為に、断じて手放せない。

 大和カンパニーも、遂に露への『ダークキャット』を始めとしたジャミング装置の販売を禁止した。

 大和カンパニーだけでは無い。露の方でも輸入を禁じていたし、日本の各社による商品の販売・輸出入が全面的に禁止された。

 露の方でも輸出も販売も禁じていたし、お互い様な一面がある一方、日本は侵略の為の軍事力の保持を永遠に放棄しているのに対し、露は北海道侵攻の可能性をハッキリと明示した。

 当然、サイコソフトの販売・輸出入も禁じていたし、露では複製品は作れる一方で、新しいサイコソフトの情報だけでは、製作を再現出来なかった。

 だが、既に『Gungnir』に関しては、露でも一つは入手しているだろうと噂されていたし、その複製は悪夢を呼ぶばかりである。

 米日韓V.S.北中露の戦争は秒読み態勢に入っており、それにより、核の使用による七日間での決着が予想されていたが、七日間で世界の全てが滅ぶ事態が予想されている。

 即ち、世界規模核戦争の予兆が出ているのである。

 西暦2026年の大災害は避けられた。

 だが、北中露はそれを由とはしなかったのである。

 結果、世界の全てが滅ぼうとも、自らの野望を満たす為に、必死過ぎたのである。

 日本だけは、最後まで平和的交渉で解決を試みるが、北中露では、ソレを『負け犬の遠吠え』と見做したのである。

 世界の全てを滅ぼしておいて、『戦争に勝ったから正義だ!』等と主張しても、統治するだけの人間は残らない。

 あとトリガー一つ。核のスイッチが入れられたら、破滅は招かれる。

 コレに関しては、先手が負ける運命は宿命に近い。

 運命は避けられるが、宿命は避けられない。

 地球さんインターネットが本気を出したら、どれだけの自滅的エラーを引き起こすのか、見物ではある。

 『クルセイダー』では、『Gungnir』の量産と配備を進めていたし、迎撃できる可能性は高い。

 そう云う意味では、北海道は最重要視して防護体制が整っていた。

 自衛隊にも、『Gungnir』は取り引きしようとしていたのだが、所持するだけで犯罪になる兵器を、正面からトレードは出来なかった。

 結果、非正規のルートでのトレードが試みられたが、『クルセイダー』では、利益の出る金額は提示出来なかった。

 赤字寸前のトレード。ソレによって、北海道は強固に護られるであろうと、『クルセイダー』の皆は信じていた。