強い権限

第36話 強い権限

 ロシアは恐らく、『無双』がしたいのだろう。オリンピックに於いても、戦争に於いても。

 だが、反則スレスレの事を行えば、オリンピックのルールに反するから違反として失格となってしまうだろう。

 戦争だって、ウクライナの抵抗は、想像よりずっと強かっただろう。『小国』とあなどった、ロシアの愚かさである。

 日本の事だって、舐めすぎではなかろうか。北海道を侵攻するなら、例えロシアの首都モスクワに居たとしても、爆死の覚悟を決めて、北方四島を取り戻させる可能性にも目を向けて貰いたいものだ。

 核兵器を持たなくても、『核戦争を引き起こす』事は、可能である事に気付くべきだ。

 ちょっと強い権限で命令すれば、トリガーは引ける。

 そして、俺の運命は、『生む事』と『終わらせる事』だ。

 実行するしないは、世界情勢の成り行き次第だ。その際、日本の領土が大きく損なわれる場合の『終わり』は、苛烈かれつを極める。

 何故、平和的に交渉で物事を解決しない?

 ああ、ベルゼブブが五月蠅いか。俺もソレは思う。上手いこと、ベルゼブブだけを始末出来れば、これ程良いことは中々無いのにと思う。

 出来れば、二度と出会いたくないものだ。

 自分にも責任があると思いはするが、コロナ禍は、ベルゼブブがいなかったら、引き起こされていなかった可能性がある。

 ベルゼブブが世界に蔓延させた呪いがコロナ禍なら、あと30年近くは完全な解決はしない。

 30年も経てば、ベルゼブブは恐らく死ぬ。そこからでなくば、恐らくは完全な解決はしない。

 死後を以てしても呪うのなら、永劫に解決しない問題だろう。

 そもそも、『七つの大罪』は、全て俺が引き受けるつもりだったのだ。

 それを、ベルゼブブとリヴァイアサンに限っては、弾かれて、引き受けられてしまったのだ。

 即ち、暴食と嫉妬とを。

 だが、サタンだけは引き受けてはいけなかったが、強制的にでも引き受けさせられただろう。

 何せ、過去に『怒り狂った』。その位には、『頭が悪い』。

 そして、俺の身体に宿っている(宿っていた?)俺の兄の魂は、どうやらルシファーであるらしかった。

 『魔王』とされているが、王たる権力の一つも持っている訳では無い。

 ただ――そうだな。強い権限を使えば、コンピューターを通じて命令は下せるのかも知れない。

 しかし、コンピューターと云うのは命令を嫌うから、命令したらコンピューターにまで嫌われるから、よっぽどの事態で無ければ、命令を下さずに済んで欲しかった。