第7話 魔力ポーション
職業柄、卯辰は全ての魔法の行使が可能だ。
魔力も高く、魔法戦を得意とし、物理戦を苦手とする。
その『偉大なる賢者』という職業は、大まかに言えばそういう特徴がある。
そして卯辰は、新しい魔法として、『リキャストタイムの短縮魔法』を考案した。
ソレは、既に発生している全ての『リキャストタイム』を半減すると云う効果だ。
故に、ソレ自体に、12時間のリキャストタイムが発生してしまう。
――十分であろう。
卯辰は、そう判断した。
追加して、『ヘイスト』の魔法の強化版である、処理速度の倍速化に加え、効果時間中はリキャストタイムの経過も早める魔法も開発した。
その魔法、『ハイヘイスト』のリキャストタイムは、1時間。効果時間も1時間。つまり、『張りっ放し』が出来るのであった。
それにより、全体完全回復魔法は、リキャストタイムを3時間にまで短縮することが可能となった。
但し、ソレを実行するためには、魔力ポーションをがぶ飲みする必要があった。従来の魔力だけでは足りないのだ。
よって、卯辰はある一定金額以下の魔力ポーションを、ゲーム内オークションバザーで、買い占めていた。
結果、当然のように起こる、魔力ポーションの価格の高騰。
トップを走るプレイヤーである卯辰ですら、『高過ぎて手を出せない』と云う魔力ポーションは、非常に良い転売商品になった。
だが、高値であるが故に、『どうしても必要なプレイヤー』以外は買わないのだ。
従って、売れるケースがレアケースとなり、転売だけが目的のプレイヤーが取り扱う商品としては、欠陥品だった。
よって、卯辰は自力で魔力ポーションの作成を手掛ける事にした。
生産系職業として、『錬金術師』になる。そして少しレベル上げすれば、魔力ポーションは作るのがそう難しい商品では無かった。
しかも、ココでも卯辰はやらかす。
魔力ポーションの素材の全てを、一定額以下のモノを全て買い占めたのだ。
加える事の、自力での採取。
ソレにより、より低価格での魔力ポーションの作成をして、卯辰個人が使う分としては、十分に事足りた。
他のプレイヤーにとっては、迷惑の極みであった。
だが、ソレによって儲けているプレイヤーが存在していることも確かだ。
特に、魔力ポーションの納品を条件とするクエストの存在が、仕方なしの高値での魔力ポーションの購入と云う状況が発生した。
大勢のプレイヤーからは嫌悪されている。
だが、極一握りのプレイヤーからは、大変感謝されていた。
不遇だった魔力ポーションの絶妙な需要と供給のバランス。
特に、狙って魔力ポーションを作成しているプレイヤーからすれば、「ようやく報われる」と、そう思わせた。
と、同時に、直接的に卯辰の責任ではないが、魔力ポーションの素材の納品依頼がグッと増えた。
素材そのものの価値もそれ相応に上がる。
素材の採取には、他人の採取の影響がシステム上は存在しないので、自力で素材を採取する卯辰には関係無かったが、ココに来て、グッと錬金術師のレベルを上げた。
目的は、総合回復ポーションの作成である。
コレに関しては、買い占めを出来るような金額では無かった。
せいぜいが、素材の買い占め程度である。
斯くして、卯辰の無双の準備は整った。
いつものメンバーに加わり、卯辰は強力なヒーラーとして活躍してゆく。
――時々、魔法アタッカーとして。
卯辰は、卑怯なまでに強いキャラクターとして名を挙げていくのであった。