第18話 勝利‼
「滝沢さん」
俺は、女王に挑戦状を叩き付ける。
「今日は、俺は貴女に勝つ!」
その言葉を、女王・滝沢 神菜さんは嘲笑った。
「随分なご自信ね。
いいわ、挑戦を受けてあげる。
でも、自信がある今、貴方が勝てないなら、この島を出るまで、貴方が勝つことは無いわ。
だけど、本当に勝てたら、貴方と恋人として付き合ってあげる」
いつでも上から目線だ。それを、今日からは対等まで持って行く!
大アルカナは『The Lovers』、勝利条件は『辛未』『丙』『辰』だ。
俺は、ずっと勘違いをしていた。このゲーム、一手ずつの応報で決着を着けるゲームではない。
勿論、多少の攻防をしなければ、相手が優位なまま、決着が付いてしまうが。
多少の溜めからの、一斉展開。
確かに、滝沢さんの戦略も、そう云ったものだった。
ヘキサー能力も使って、奥義も一気に放つ。
そして、今回は、恐らく向こうも『The Lovers』であると云う確信を持ち、ワザと中途半端な牽制をして、止めで逆転し――勝利した!
「ああ、これで私も、このゲームから解放されるのね……」
最初に滝沢さんが呟いた感想が、ソレだった。
そうか……、滝沢さんにとっての『女王』は、『証』ではなく、『制約』だったのか……。
俺は等と思ってしまうのだった。
「ねぇ、石川さんと呼んだ方が良い?それとも吾郎?」
「当然、吾郎ですね!」
「なら、私も『神菜』と呼んで」
「うっ……、ちょっと恥ずい……」
「ねぇ、デートに行きましょうよ!あ、でも、今日の治験が終わった後でね。
それにしても、早朝6時からココに来て、勝利を勝ち取られるとは思わなかったわ」
「上手く、流れに乗れたものでね。
でも、『予想していなかった』は嘘でしょう。でなければ、『The Lovers』は選ばない筈」
「ああ、そこは無意識だったわ。
そうね、お互いに『The Lovers』ならば、この展開は当然よね」
当然……。そうか、当然なのか。このゲームを『女王』と言われるまで極めた彼女には、この流れが『当然』に見えるのか。
俺は、必死で勝ちたいと云う思いを抱き、そして、俺が時々感じる、『この世界の流れ』に乗った結果、勝てたのだ。因みに、流れに乗れば必ず勝てる訳ではない。
でも、今回は勝てる流れだった。
「今度の日曜日……」
俺は頭の中で計画を立てて、神菜にこう言った。
「早朝、って云うか、ほぼ深夜から、釣りデートに行かないか?
そして、釣った魚を捌いてもらって、朝食に食べるんだ」
「――いいわね、ソレ。ちょっと、起きるのがツラいけど」
神菜の反応も、上々なのであった。