第15話 相性
「――凄くクリアな味がする」
俺は、その低ミネラルウォーターで淹れた紅茶を、そう評した。
とりあえずの一杯だったから、ティーパックの無難な紅茶だ。癖の無い紅茶を選んだ結果だった。
因みに、俺は茶葉に関しては、ブレンドは試すものの、あまり拘らない。
安物の量産品で無ければ、茶葉による旨味の違いは、個性として認めている。
今、淹れたティーパックだって、真空状態で一包ずつ密封して、酸化を抑えているティーパックだから、単価はそこそこの茶葉と比較しても、そう安くは無い。大量生産の安物とは、香りの立ち方が違う。
「――よく分からないけど、美味しい事は分かるわ」
「えっ!?ひょっとして、超純水?!」
超純水なら、値段も納得である。言ってしまえば、軟水の最高峰だ。紅茶が美味しくなるのも納得出来る。
「……うん、悪くない」
「また買う気?」
「別にいいだろ!」
「……ご馳走してよね」
なんだかんだ言って、気に入ってるじゃないか。
それにしても。
研究員の対処は、意外に冷静だった。まるで、2割の確率で、薬の効能が表れないことを、予測していたかのようだった。
……『かのようだった』……?
いや、恐らくは予測の範疇だったのだろう。
カロリーの消費が激しいことも、恐らくは。でなければ、いくら豪勢な夕食と言っても、余りにも度が過ぎる。
寿司、焼き肉なんて、生温い。そんなの、普通のバイキングでも、然程珍しいものではない。
柳川鍋?スタミナをつける以外の目的で、そんなものを出すだろうか。鍋は、銀紙の小さなものだったが。
後に気付いて確保したが、フグの刺身まであった。フォアグラも、美味かったなぁー……。初めて食ったよ。
質の良し悪しを判断出来る訳でも無いが、トリュフは、ナッツみたいな食感だった。パスタに、少量乗っていただけだったけど。
探せば、キャビアもあったかも知れない。
「……ラムレーズンと合いそうだな」