AEgisの盾

第5話 AEgisイージスの盾

 今日も今日とて、お守りと聖水を作り、売りさばく。
 
 拝みに来た人の願いを叶えつつも、俺自身も他の神様にお参りに行く。
 
 「『幸運』のスキルレベルを上げて下さい!」との願いもあったけど、うん、俺には未だ無理。俺自身の『幸運』のスキルレベルが7に届かないと。因みに、月の女神様達はレベル6で出来るそうなので、ちょっと羨ましかったりする。
 
 ログアウトしている時や、他の神様にお参りに行ったりする時の為にも、『願いを叶えるAUTO機能』を『ON』にしているので、ログインしてみたら、『幸運』のスキルレベルが一つ上がっていたりすることもある。――今日みたいに。
 
 あと2レベルだ!でも、ここからが厳しいのだと思う。
 
 「『幸運』のスキルレベル上昇」の効果値は、月の女神様たちがレベル6からで当初はレベル2まで。自身のスキルレベル上昇に伴って、同じレベル分、「スキルレベル上昇」の上限値も増えていく。
 
 俺たち『月の神様』は、レベル7からの代わりに、当初はレベル4まで。同じく、同じレベル分、「スキルレベル上昇」の上限値も増えていく。
 
 なので、レベルが7を上回れば、『月の女神様』たちより、俺たち『月の神様』の方が能力は高くなる計算になる。だから、一長一短なのだ。
 
 因みに、このゲーム内に『唯一神』は居ない。『全知全能の神』も居ない。
 
 『唯一神』の方は、他の神様と区別されるものだし、強いて言えば、このゲーム内の神様が持ち回りで『唯一神』の役割を果たしている。
 
 『全知全能の神』は、『ありとあらゆる世界のありとあらゆる存在を超越する者』だから、ありとあらゆる世界のありとあらゆる存在は、『全知全能の神』の一部であると解釈が出来るが、『全知全能の神』としてひと柱の存在として存在する事が出来ない。『全知全能』であるが故に。
 
 ついでに言うと、この世界のNPCは、『多神教』であるとされている。なので、最古参の天照大御神様とかは、信者の数がえげつないことになっている。羨ましいものだ。せめて、『祭り』の開催出来る程度の信者が集まって欲しいものだ。基準は一応、『信者が10000人以上』とされている。
 
 あ、アルテミス様だ~♪えっ、アテネ様も一緒?!ヤベ。俺、アルテミス様にはお参りしたけど、アテネ様にはお参りしてねぇ。
 
 とりあえず、お二方には、『幸運』のスキルと『LUK+70』のステータスボーナスを授けて、アテネ様を祀る神殿に向かう事にした。そう、与えられるステータスボーナスの最大値が、『70』まで上がったんだ。
 
 ――良し、アテネ様の神殿に着いたぞ。
 
 願う事は、唯一つ。
 
「『AEgisの盾』を下さい!」

 それだけだ。
 
 それによって、『AEgisの盾』と云うスキルが手に入った。
 
 どの程度の効果があるのかは分からない。
 
 だけど、打つべき布石だ。
 
 『西暦の4年ズレ説』があるとしても、2026年が過ぎるまでは、油断出来ない。
 
 その仮説が正しいとするならば、既に脅威は去ったと言えるが、世間一般に広がっていない以上、油断する訳にはいかない。
 
「また来ます!」

 そう誓って、俺は神社に帰ろうとした。
 
 あ、天照大御神様がお祭りやってる~♪これは寄らなくちゃ~♪たこ焼き買って、と。――うん、美味い!
 
 うん、やはりお祭りを行う為に信者を集めねば!
 
 たこ焼き食べる為じゃないよ?験担げんかつぎの為だよ?
 
 じゃあ、帰ってお守り作って、聖水作って~♪
 
 コレが、良く売れるんだ。でも、聖水に関しては、女神様の聖水には人気で遠く及ばない。
 
 それでも、1日の内に完売するのだから、有難い事だ。
 
 さーて、またそろそろ、『ナポレオン』でもしようか♪
 
 いや、信者獲得の為には重要なんだよ?信じてくれないかも知れないけど。
 
 神々の交流会。コレによって、仲良くなった神様の信者が、コチラも信仰してくれたり、コチラの信者が彼方あちらの神様を信仰したり。
 
 でも、間違っても侵攻はして欲しくない。
 
 侵攻する『勇気』と勝者の『正義』を七元徳に数えたあの宗教は、狂っていると思う。色々と。
 
 勝手に世界の寿命を定めないでいただきたい。――もう、大昔の人だから不可能だけど。
 
 俺がもしタイムマシンに乗れたら、その時代に行って、その人の教えを出来るだけ広まらないようにしたい。
 
 それ位、俺は『唯一神』信仰が嫌いだ。