大宴会

第47話 大宴会

『その通り』

 聞こえて来たのは、ルシファーの声。アイオロスは見回すが、姿は無い。
 
『魔法で話し掛けているのだ、探しても見つからぬよ。

 さて、ウォーディン。提案が一つある。
 
 イリスさんとは別に、決着を着けないか?
 
 流石に僕も、あなたとイリスさんの二人を同時に敵に回して、勝てる自信は無い。
 
 だが、他に誰が居ても構わない。
 
 別に、あなたの命を奪おうと考えている訳じゃ無い。
 
 僕があなたに勝ったら、大きめのアルフェリオン製品を僕の為に作っていただきたいのだ。
 
 その条件で、丁度一週間後の夜に、僕と戦っていただけないか?』
 
「今すぐ、始めないか?」

『イリスさんと、100キロ以上の距離を置いて欲しいんだ。

 一週間後と言えば、満月の頃。あなたの力が最も発揮される時だ。
 
 そちらの方があなたにとっても都合が良いのではないかな?』
 
「……断る、と言ったら?」

『この街を壊滅させます。それに十分なエンジェルは、揃っている事ですし。

 返事は?『YES』or『No』?」
 
 返事など、聞くまでも無い質問だ。ウォーディンも、然程返事を迷わなかった。
 
「――『YES』、だ。が、条件がある」

『何でしょう?大抵は飲みますよ』

「イリスと共に戦いたい。

 お前の、フライト・レースへの関りは私としても認めている。
 
 そのお前を、殺さずに負けを認めさせるのは、流石に私でもイリスの協力無しでは不可能に近い。
 
 その条件を飲めないのなら、一週間後を待たずにコチラから仕掛ける。――お前を殺す事も視野に入れてな。
 
 飲むのなら、私が勝ってもお前の命は保証しよう」
 
 恐らく、ウォーディンが逆に突き付けた条件も、ルシファーにとっては返事を迷う余裕のある条件では無かった。
 
『……仕方が無いでしょう。飲みました、その条件。

 では、決戦の地は、今、あなたがいる、そこではいかがでしょう?』
 
「良いだろう。それなら、落ち着いて祝勝会が出来る。

 アイオロス!酒だ!酒を買って来い!今日は、とことん呑むぞ!」
 
「……師匠が、こんなに酒癖が悪かったなんて……」

「あら、ゼフィアの事を、何にも知らないのね。

 呑みたい時は呑むのよ。普段、全く呑まない分。
 
 ルシファーが来ないのなら、私も呑もうかしら?」
 
『失礼、僕も加わって良いかな?』

 聞こえたのは、ルシファーの声だった。
 
『仮にも3位に入賞しておいて、一緒に酒でも呑みながら騒いで、祝ってくれる仲間がいないというのは、ちょっと寂しい』

 

 その日は、ルシファーを交えての大宴会となった。