第13話 チンピラの実力
「ところで、そっちの二人、見所はありそうかしら?虎白オジサン」
「低いレベルで見所がある」
はっきり言う。パフェや緋三虎と比べてしまうと、本当にその通りなのだろうが。
「大和さ~ん。相手してあげてくれる?」
二人を見た大和は、鼻で笑った。
「コイツらを?」
「何か不満?アタシの言う事が聞けないのかしら?」
――かと思うと、即座に蒼褪めた。
「どっちか、リングに上がりやがれ」
大和は、ヘッドギアも付けず、舐め切っている。勿論、それが当然である位の差が、あるのだろうが。
二人でお見合いし、ジャンケンになりそうな気配を察して、虎白が片方の背を押した。空手男の方だ。
「三分持ったら、大したもンだ」
ヘッドギア、マウスピースは当然。グローブも付けさせられ、空手男はリングに上がった。
大和は、プロの格闘家だ。当然の結果として、空手男は玩ばれた。
最後は強烈なボディーブロー。
空手男が立ち上がる前に、三分の経過を示すゴングが鳴った。
「戻すなよ。
大和にも、注意一つ。手ェ、抜きすぎだ。
はいはい、次がいるんだ。さっさとリングから降りろ」
転げ落ちるようにしてリングから降りた空手男に、パフェが近付く。
「ね?腹筋、足りないでしょ?」
「そ、それどころじゃ、ないッス……」
マウスピースを外して、そう返すのが精一杯らしかった。
「誰かー、バケツー!」
「いや……そこまでは……」
吐く程強く、叩かれたわけじゃないらしい。大和も、手加減したのだろう。
柔道男は、2分、持たなかった。
「じゃ、大和さんが天狗になったところで、緋三虎、行ってみようかー!」
「え~!」
緋三虎は、不満そうだった。そして大和は、不安そうだった。
「意外と面白いよ。ささ、上がって、上がって」
「む、無理して勧める必要は、決してないのでは……」
逃げ腰の大和が、パフェのひと睨みで落胆した。
大和も、嫌々ながら覚悟が決まり、急いでヘッドギアとマウスピースを装着する。
「緋三虎、くれぐれも殺しちゃダメよ」
「ひぃぃぃぃー!」
骨の一本は、折られるだろうか。大和の不安は高まるばかり。心は、既に折れていた。
「……どうすれば終わりなの?」
「ノックアウト。……意味は分かる?」
「……分かった」
グローブを打ち合わせ、少々、やる気が出て来たのだろうか?
「大和さん、お手柔らかに」
ニッコリと微笑んだ緋三虎が、大和には死神に見えた。
やむを得ぬ事情で、虎白は試合にこそ出場できぬが、大和よりも強い。
それを、一撃で伸した。そのパンチをまともに喰らえば……。
脳裏をよぎる、死の予感。
カァン!
ゴングの音で、始まった。