第6話 記録数
「……最悪だ……」
「何が?」
ケントの指差す先を見る。第1位、ジャンヌ・ダルク。記録は47。2位は28。
一番下の10位は3人がタイ記録で22だから、俺は惜しいところで負けてしまった事になる。
確かに一人だけ飛び抜けた記録だとは思うが、ケントならそのくらいは元から知っていたのではなかろうか?
「記録が、一つ伸びてる」
3人が、顔を見合わせた。揃って顔色が変わっている。
3人は、しばらくそのまま凍り付く。
やがてゆっくりと、その視線が俺の顔へ集中した。……何だ、何だぁ?
「ジャンヌ・ダルクが現れた時に、もしも同時に蒼木が居たら……?」
深刻そうな、顔、顔、顔。
「……蒼木、勝率は?」
「えーと……21勝1敗だから……」
「9割5分2厘」
再び、三人が顔を見合わせる。
「当たる、よな?」
「他に当たるとしたら……」
「初めての一戦を、運良く勝った奴……」
「つまり……」
「……記録が、伸びる」
また、揃って俺を見る。
圭の手が、俺の肩をポンと叩いた。
「次は勝てよ、蒼木!」
「そうだ、勝てるのはお前しか居ない!」
「10年前はタンクタイプなんて存在しなかったんだ!
時代の違いを思い知らせてやれ!」
何を無責任な事を。俺の見事なまでの負けっぷりを見ていなかったのか?
「……なぁ。そんな奴が、何で今さら、姿を見せたんだ?」
俺の素朴な疑問が、三度目のお見合いの切っ掛けとなってしまった。
「今回の大会って……」
「賞品、凄いよな……」
「……狙ってるよな、当然」
長い沈黙。そして。
「「「最悪だぁーっ!」」」
……俺たちって、よく、店員の注意を受けずに済んでいるな。