第9話 6日に一度案
バルテマーは、デッドリッグの相談に快く乗ってくれた。
即ち、エカード=ヤンゼン先生への、相談と云う名の愚痴の零し口になって貰う事への依頼をだ。
バルテマーからは、『ならばお前のクラスの受け持ちの先生に相談すれば良いではないか』との一度の断りを入れられたが、デッドリッグはそのまま強引に通した。
ストーリー展開上、信頼の置けるキャラだ。
そして、来年はデッドリッグのクラスの担当になる予定の先生だ。デッドリッグに於いても、少なくとも来年の一年間は信用出来る。
逆に言うと、今年中の相談は、ちょっと覚悟が要る。……絶対に漏らさないとは、断言できない。
コレがクラスの担当となると、守秘義務が生じるので、ソレを明かす事はエカードの教師としての命を奪う事態に陥る。
担任の先生になったら、盛大に愚痴る土台を作っておこう!
デッドリッグにとっては、そんな軽い気持ちでのものだった。
早速とばかりに、デッドリッグはエカード先生へのアポイントを取った。
無事にアポイントは取れ、デッドリッグは軽い話題を幾つか考えて、面談に臨んだ。
そして、面談室に向かう途中で、ふと気が付いた。──そう云えば、『デッドリッグ愚痴る』と云う話があったなぁ、と云う記憶から。
そう、デッドリッグはエカードに重大な秘密を打ち明けて、それで弱みを握られ、断罪される……的な。
(ヤベェ……)
咄嗟に、デッドリッグは問題にならない話題を幾つか考え、とりあえず今日を乗り越える事にした。
結果。──学園の授業への不満やら、下らない話題を駆使して、今回の愚痴り会は乗り越えた。
多分、問題の無い内容だった筈だ。
学園での授業への不満は、エカード先生は『それは君の成績が優秀過ぎるが故に抱く不満だよ』と流した。
更には、『学園での授業は、成績優秀者を育成する為の授業じゃない。逆に、成績劣等者への教育を施す為のものだよ』とか。
或いは、『成績優秀者は、授業は無視しても良いから、自主的に学習すべきだよ』とか。
兎も角、エカード先生は至極真面目にデッドリッグの不満へと向き合ってくれた。
彼が裏切るとは思いたくない。
だが、ネタを掴ませるのはダメだ。
デッドリッグは、そう判断した。
無難に──否、順調にエカードとの面談を乗り越えたデッドリッグは、「また相談したい事が出来たら、お願いします」と言い出す事で、二度と相談しないと云う選択肢を選んだ。
そして、根本的な問題は、自分で乗り越えるべく動いた。
──即ち、ヒロイン候補達との関係の、『7日に1度』案の提案をと。
速攻で拒否されたが、粘り強く交渉した結果、次の周からの『4日に1度』案が通り、又、折を見て『6日に1度』迄は引き延ばしを検討する、と云う案に落ち着いた。
まぁ、最終的にデッドリッグからの、『そんなにお楽しみなら、最上級の快楽を与えて、その為のオモチャにする』と云う脅しが効いた。
実際、ゲーム内でだが、ヒロイン達の性癖を知っていた為、最上級の快楽をヒロイン達にそれぞれ施す手段を、デッドリッグは知っていた。
ただ、ソレがデッドリッグにとっては好ましくない選択肢だから避けていただけの話だ。脅しの通りにするのは、比較的簡単と言えた。
最終的にデッドリッグは『7日に1度』案を通すつもりでいたが、こんな早々にその案を通せないのも判っていた。
そんな訳で、『4日に1度』案の通った最初のローズの番に、行為の終了後、ローズからは『他の全員が納得すれば、ワタクシは『6日に1度』でも構いませんわ』との言質を取る。
他のヒロイン達も、中には『未だ暫くは『4日に1度』にして欲しい』と言う娘も居たが、概ね、『6日に1度』案は近い内に通る見通しが立った。
デッドリッグは、そんな彼女達に、『1度だけ、『最上級の快楽』と云うものを味わわせてあげようか?』と云う質問を個別に取り、全員が『1度なら』と言う。
結果、彼女達はゲーム中で描写された通りの段取りで快楽を齎されたが、『確かに、コレは危ない』との共通の見解で、『6日に1度』案が通った。
デッドリッグは、イザとなったら、次の段階に移行する行為に及ぶと云う選択肢を考え、『7日に1度』案も通るだろうと楽観視していたのだった。