第6話 『Swan』使い
隼那は彼の下を比較的常識的なパンツスーツ姿で訪れていた。
そして、とある地下鉄の駅のある出口で、彼を発見し、声を掛ける。
「『柊木 治』君かしら?」
「ええ。貴女は?」
「安土 隼那よ。
ちょっと、場所を変えましょう」
「あ、はい」
隼那が『柊木 治』を案内させた先は、ちょっとこ洒落てはいるが、裏通りの客の少ない喫茶店だった。
「ブレンドコーヒー二つ」
隼那は有無を言わせずそう注文すると、名刺を一枚取り出した。
「『クルセイダー』の札幌支部長をしている、『安土 隼那』と申します。
この度は、貴方を『Swan』の適合者と見做して、契約を結びに参りました。
断っていただいても構いません。
ですが、契約を結んだ場合、『Swan』の施術を依頼し、成功報酬で、一回に付き支払われる代金の3%である、90万円を支払います。
但し、『Swan』は貸与と云う形で扱います。
如何でしょうか?質問等、あったらどうぞ」
「例えば、『Swan』そのものの対価は幾らになりますか?」
「『Swan』のサイコソフトは、1億円になります。
ですので、必ず我々の同席の下、施術の際のみ、『Swan』は貸与します。
もしも『Swan』の買い取りを希望なさるのでしたら、1億5000万円程を支払っていただきます」
「ハハハッ。とてもじゃないが、買い取れないや。
で、施術はどの位の頻度で?」
「月に一件、年に10回以上は依頼を受け付ける予定です。
十分でしょうか?」
「その程度?!
ああ、それでも年収一千万は固いのか。
ええ、十分です」
「では。仮契約ですが、コチラ、契約書になります。
安定して年に10回以上の治療が行えるようなら、本格的な契約に移行します。
よろしいでしょうか?」
「仮契約と本契約との差は何ですか?」
「本当は隠したまま仮契約をと思っていたのですが、質問とあらば、答えましょう。
報酬が10%の300万円になります」
その言葉に、治は笑い声を挙げた。
「ハハハッ、ソイツぁいいや。
いいですね、仮契約を結びましょうか」
「では、契約書をキチンと読んだ上で、サインをお願いします」
「――フーン……」
治は契約書を読み込んでいく。
特に気になった点も無かったようで、治は契約書にサインした。
「本日はお時間ございますか?」
「――えっ!?
……まぁ、ありますけど」
「では、一件目の治療に参りましょうか?」
「えっ?!あ、はい……」
こうして柊木 治は、クルセイダーとの繋がりを持つのだった。