第35話 魂
「そう云えば、『Twilight』さんは夕姫さんだから判るけど、『Morning』さんは何故、昼姫さんなのに?」
訊いてはならん事を、デリカシーの無い男筆頭の『Kichiku』が訊ねた。
「──私には、水子の姉、朝姫が居りまして……」
「ゴメン!聞いちゃダメな話っぽいね。
もう、何も言わなくて良いよ!」
あら。私的には、ソコまで聞いたのなら、最後まで言わせていただきたかったんですけど。
──等とは思ったけれども、顔には支配権が及んでいないから、表情で語る事も出来なかった。
精神の半分は支配しているのに……。
と云うか、ドッチが朝姫でドッチが昼姫なのか、実は判明していないのよねぇ……。
困ったものだわ。と思いながらも、キレた時に表れる、本当の『本性』と云うものが怖いけれども心強いから、頼りにはしているのだけれども。
時代が時代なら、私たちは『魔女』扱いよ。何故、『魔女』を畏れたのかは、全てあの基督のせいだ。
『魔女狩り』した者たちこそが、正に『魔王』そのものよ。
端的に言えば、『ズルかった』のでしょうね。ただの思い込みの問題で、小魔法を使えてしまうのですから。
『ズルく』思い込めない。その事実が腹立たしくて、殆ど八つ当たりよ。
現代でも、『ズルく』思い込める人は存在する。
逆に、『ズルく』思い込みたくて、詐欺に引っ掛かる人も居る。
真に『ズルく』思い込めているのは、詐欺師の方ばかりなのにね。
一つ、『ズルい』情報を教えましょうか。
『銀』への投資は、正当なルートで銀のインゴットそのものを入手出来れば、縁起は悪いけれども稼げるわ。
コレは、70%は保証するわ。別に、損したからと言って、損害を補填すると云う意味では無いけれども。
ドクが言っていたから、70%の確率で成功する事を預言しておくわ。
但し、その入手を人の手を借りて行うのは、詐欺に引っ掛かる典型的な例だから、槍玉に揚げておくわ。
ね?縁起が悪いでしょう?
昼姫には枕元に現れて伝えたけど、銀の正式な入手方法が判らず、断念していたけど、卯月さんは流石ね。銀の取引を商いにする人に伝手があって、少し買い取っているらしいわ。
十分に重たかったから、本物の銀であると信じたいとは言っているけれど。
そう云えば、卯月さんは『本気の証』として、プラチナ製のペアの指輪を、昼姫とお互いに嵌め合ったわ。『Bizarre』とアルファベットを刻んだ指輪を。
──え?『Strange』が本物?馬鹿ね。『多少のアレンジ』を加えたものこそが本物だと、あの魔法使い映画から学ばなかったの?
だから、本物に刻む文字は、他のパターンもある!
敢えて、挙げはしないけれども。
だから、昼姫は手に入れたのよ、奇跡の欠片の指輪を。
卯月さんが、『別に婚約指輪と云う訳でも無いから』と言って受け取り易くし、宝石の一つも嵌めていないのも、卯月さんらしいわよねぇ……。
ああ、そうそう。ようやく、朝姫に魂が吹き込まれたから、どんどん主張を貼り出して行くわよ!
昼姫。貴女だけが主人公じゃ無いんだからね!
……そう言って伝えられたら、どれだけ楽だった事だろうに。
そう、私は死者が故に、超過無限大の愛をも囁く事も出来るのよ!
何だったら、昼姫の身体を乗っ取って、卯月さんを寝取ってやろうかしら?
あら、お下品だったわね。失礼しました。
でも、意味が無いからやらないわよ!でも、昼姫が抱かれた時には共に感じる位は……自由よね?