第84話 風林火山
『風林火山』とは、武田信玄が用いて有名になったものだが。
疾きこと風の如く
静かなること林の如く
侵略すること火の如く
動かざること山の如し
と云う意味合いがある。
ソレに対し、『風林海山』を提唱したが。
自由たること風の如く
不自然たること林の如く
深淵たること海の如く
壮大たること山の如し
なぞと嘯いていた。
だが、捨てた侵略の『火』が、『丙(火の兄)』の俺には捨て切れなかった。
米国は何をやっている?露の唱える覇道は、全世界の制覇まで止まらないつもりのようだぞ?
国力の差が余り無い今、攻めなければ数の力で制覇されるぞ?!
それとも、既に中が露に支援しているから、現時点で既に、勝てない国力差になっているのか?
もういいよ。終わりにしよう。キリが無いから。
あと一息だ。目標を達成したら、俺は千の風になる。
「総司郎。この秘密兵器が必要みたい」
紗斗里はそう言う。
「ん?何だい?」
「『Dragon Ice』コキュートス。
世界を凍て付かせ、終わりへと導くサイコソフト」
「……!!そんなものが必要な状況になったのか!」
「もうとっくに、ね。
彼方は、引けば負け犬・チキンと罵られるから、引くに引けない。
戦争を止める『勇気』ならば、僕は『美徳』と認めるのにね」
「だが、露も停戦交渉をしようとした事もあるんだろう?」
総司郎の発言に、紗斗里が顔を顰めた。
「ソレも怪しいものだよ。
暗殺の為に呼び出そうと試みた可能性が否めない。
それに、露の提案した停戦条件は、宇が認められるものではなかった」
「社会主義国に塩!だな。
各国に、トン単位で塩を贈ってみようか!」
「うーん……試す価値アリ……かなぁ……」
「試しに、この物語世界の中だけでも良いから、贈ってみようよ!」
「……うん。それならアリだね!」
こうして、社会主義国各国に贈られた塩。
ソレは、やはりコレラ亜種での死者が増すと云う結果に繋がった。
「本来は、サタン同士として、協力して基督教に反抗すべきだったんだけどね」
「サタンと云えど、他のサタンをイジメたくなる運命からは、逃れ難いのかも知れないね」
とは言え、露が日本・北海道に侵攻して来る前に、大津波に襲われそうである事実から、果たして『予言外し』が可能なのかどうか、甚だ怪しかったのだった。