頭が悪い

第22話 頭が悪い

 作戦は、非常に大規模に行われた。

 最早、地球規模である。全世界の『クルセイダー』がネットを組んで、蝗退治に動いた。

 その作戦は、『蝗駆除作戦第7号』と名付けられた。地球規模で見れば、既に6回は作戦を展開済みなのである。

 但し、露だけは、作戦への参加を許可されなかった。

 誰の為でもない、日本人が自分たちの為に行う作戦である。日本、正確には北海道への侵攻の可能性を述べた国など、救う義理は無い。

 中は別に明確に日本の領土を狙ってはいなかったし、台の取り込みも経済的な力に因るものだ。軍事力や暴力を振るった訳では無い。

 朝は韓と併合されつつある。

 中東の方も、戦争は終結のきざしを見せている。

 露だけは、ゆるしてはいけないのだ。

 ココで赦すと、露は世界征服に乗り出す。絶対にだ!

 コレは、『露西亜』と云う国名が変わらない限り、覆らない。

 ターゲットになる国は、『ロシアンルーレット』によって決まるのだから、タチが悪い。

 宇が最初のターゲット、北海道が次なるターゲットなのだろうが、コレラ亜種、蝗害と続き、ソレラが続いても、未だ尚、他の国の領土を狙うだろうか?

 恐らくは中が支援するが、病死者・餓死者は多かろう。

 この、中と露の繋がりを断つ。コレが中々の難題であるが、必要な措置なのだ。

 ――中と露の双方に、裏切り行為を互いの国に行わせる。

 その位の大胆な作戦が必要だった。

 『クルセイダー』のバチカン市国本部に於いても、露の主導者が『サタン』であると云う事実から、ロシアを見殺しにする方針は固められた。

 そして、露の『クルセイダー』は、中の『クルセイダー』が裏切ったと見做した。

 中の言い分では、『サタンが指揮する国が、何をほざいている?』と云う話だ。

 日本にもサタンは居るが(それも複数)、主導者にはなっていないし、魔王の管理組織もある。

 魔王はその管理組織に背くと、社会的に抹殺されるが、その管理組織に属する事も、相応に困難である。

 ましてや、社会的に死んでいる人間が、社会的に生き返るのはそれ相応に難題だ。

 露が死の国と化すまで、あとわずかの時間に思われた。

「日本に対して、誠意ある言動をすれば、救ってあげられないものか、上に問い合わせる位はするのにね」

 隼那がそう言い、恭次がこう返す。

「無理だろう。あの無駄に言葉が複雑な国が、『頭が悪い』と云う事実を受け入れるとは、到底思えない」

「……そうか。『頭が悪い』のね」

 この後、日本の首脳陣の進退問題に対する喧々諤々けんけんがくがくの討論がされたが、流石に必要あるまい。このように省略する事にする。