第42話 銀河連合
昨日のデートの終わり際。
昼姫の家の真ん前で、一瞬の隙をついて卯月と口づけを交わした昼姫は、今日はご機嫌だった。
鼻歌歌いながらなので、周囲は即座に洞察した。
夕姫は「チィッ!」と舌打ちを打つ。
触らぬ神に祟りなしである。
誰もがその話題を避けていたが、卯月はボーっとしがちで。
「『Fujiko』さん、プレイに集中しましょう!」
「ああ、ゴメン。ありがとう、『Morning』さん」
ああ、でもそうね。道場内ではアカウント名で呼び合う事は、暗黙の了解事項であったらしい。
今日は、昼姫の方が卯月さんに手助けしがち。
でも、順位は二人とも、『King』さんには勝っている。
このゲーム、ルールとして、日本人以外は一ヵ国につき5名迄と決められているから、諸外国勢が勝つのは相当に渋い筈。
日本も、ありとあらゆる競技で、ルールのレベルでイジメを受けていたのだ。日本が主導する競技に於いて、諸外国へのルールが厳しい事は、日本イジメを止めなければ、大義名分が立つ。
当然、他の国の国競技では、同様に他国をルールのレベルでイジメ、特に日本に対するイジメが厳しかった。
中には、実質的に日本人が参加出来ない競技もあった。
だが、社会主義国は、中を除いて、文化レベルが十分に高いと言える国が無い。
中は、模倣から入って独自の文化を築いた。
ソレは、少し昔に、中の人件費が安く、技術の基盤を模倣する機会があったから出来る事であって、他の国には未だ厳しい。
露に必要なのは、恐らく、その『文化』と云う奴なのだ。
ソレを、土地さえ奪えば『文化レベル』が上がる!なんぞと勘違いしているが故の暴走であり、止める国が無ければ、全ての世界が滅びかねない。
──否、日本の『キーパーソン』と『ベルゼブブの魔女』を殺害したい、と云う思いがあるのかも知れないが、それこそ、破壊神の封印を解く鍵になりかねぬが、構わないのか?
米の『破壊神』たり得かねぬ人物の台頭は、何としてでも防ぎたかった。
露は『サタン』にして、同時に『破壊神』たり得かねぬ人物が台頭している。
是が非でもソレは防いで頂きたかったけれど、時既に遅し。
だが。ある日の夜中。
比較的発展した国全ての首相や首相候補が、夢を見た。
──銀河連合と名乗る者たちからのメッセージの夢だった。
曰く、『TatS』は実際に行われている惑星間トレードを基にしたゲームである。
曰く、銀河連合は地球のトレードへの参入を期待している。
そして曰く、戦争を行う野蛮な国には、超光速移動技術を含む、超物理法則を教える訳にはいかない。
よって、まずは戦争をしていない国に対して技術提供を行うが、戦争をしている国に教えた場合、トレードは行わない、と。
そして、トレードする物は何でも構わない。例えば糞便や、核廃棄物でも構わないが、それの代償として得られる物は大した物では無いだろう、と。
更に言えば、価値の高い物をトレードに出せば良いと云う事では無い事や、加工品であれば、その技術に応じた価値があるだろう、と。
ついては、戦争を止めたいのであれば、その落としどころを銀河連合が請け負う事や、必ずや利益になるトレードは出来るであろうことの約束。
そして、惑星の寿命を縮めかねない交易品に関する注意事項等も伝えられ、超光速移動技術の、その移動中の衝突物に関する問題は、解決手段を未だ隠す、と。
即ち、戦争なんぞをやっている惑星は、武器を市場に持ち込みかねないと見做され、野蛮な惑星とのトレードは難しい、と伝えられた。
そして、『TatS』の運営には、実は銀河連合の手が加わっている事等も伝えられた。
序でに言えば、戦争の落としどころは、『共存共栄』の方針を以て落ち着ける事への約束もされた。
各国は極秘裏に事を進め、交易品として良さげなものを選出した。
後は、数ヵ国が戦争を止めてくれるのを待つばかりであった。