第10話 運命の輪
機能を一度停止したX機関は、人の手を借りて再起動してはいるものの、無人制御迄の回復には、まだ至っていなかった。
「あの二人は、今は邪魔になる、というわけだ」
「妹さんの学費の分だもんねー。頑張るしかないよねー」
「ペクサーになれば、一生を保証されるに等しいからな。兄として、当然の援助だ」
「私なら、実際に会いたいと思うだろうと思うのになー」
「親父の遺言だ。『会う事だけは、絶対に避けろ』、とな」
二人が向かう先は、X機関の心臓部・コアの備えられた部屋だった。
「奴が死ぬことは考えられないが――再び制御する自信は、はっきり言って、無い」
「どうするの?」
「予備と入れ替える」
「わー、大変そー……」
「手伝って貰うぞ」
「おーらい。
でも、また言って良い?
三枚目のクセに、言い方が偉そうよ」
「好きで三枚目になったわけじゃないと言っているだろう!」
二人が進む先で、いちいち二人組の警備兵が待っていて、姿を確認するだけで道を開けて行く。
時々、止めようとする者もいるが、もう一方が指示を出して二人の通行を促してゆく。
そして、一際厳重に護られた扉の前で、二人は止まった。
「さて。幾つの封印を解除すべきかな」
「目標は?」
「暴走さえされなければそれでいい」
「じゃ、風と氷と闇の三つ」
「……氷の出力に不安がある。
『運命の輪』を頼む」
「そう云えば、保管庫の封印をストレートで解除出来たの、久しぶりだったよね?」
「確率で云えば、30%もあるんだ。そう珍しくも無かろう」
「私の方は、『運命の輪』を今使うとしたら、三日は使えなくなりそう」
「周期性さえ無ければ、『αシステム』はもっと優秀なのだがな。仕方あるまい」
ムーンは『αシステム』を三つ起動させ、背中に三対六枚の光の翼を備え、扉を開こうとした。