第8話 退屈な授業
入学式で、アースは入試の時に見掛けなかった凸凹コンビを見付けた。
身長2メートルもの巨漢と、子供のような背丈をした方は小豆族か?両方を見逃した可能性は、考え難いだろう。
観察していると、二人は常に行動を共にしている。
そして、恐ろしい事に、巨人は巨大な剣を背負っている。鞘にも収められていない、抜き身で。
まあ、『αシステム』の起動をしていれば、無力な武器だが。
翌日からすぐに授業は始められ、説明書を読めば書いてあるような内容が続く。
アースには、禁呪の解読を試みる事すら出来そうな程、退屈だった。
……危険であることが判ったので、説明書は厳重に封印を施して隠してあるが。
入試を通ったのは、13人。加えて、巨人と小人。
書類審査の時点で、50人に絞られたと云うのだから、4倍ぐらいの倍率を通った事になるだろうか。
X機関に損傷を与えたことは、一千字の反省文を求められた。
それ以上のお咎めは無かったが、却ってそれが、不気味だった。
「教官殿!」
巨人と小人が、特異に目立つ理由は、体格以外にもあった。
「今の説明、今一度願いたい!」
巨人がそう云ったのは、午前中の授業だけでも20回。
「お腹空いた~!」
「黙ってろ!」
小人が巨人に怒られたのも、午前中に30回。
鼾を掻いて眠っていて、ゴツンという音がするほど殴られたのも、7回。
暇すぎて、アースはそれらを観察してばかりで、授業など聞いていなかった。既知の情報ばかりだったからだ。
昼休み。アースは、弁当など持ってきていなかったので、学食に向かった。
塩麺を注文し、スープを一口啜って、食べる気を無くした。
――本当に塩味しかしない。出汁など取っていないのだろう。
「アースちゃん、隣、良いかい?」
答える前に、小人は隣の席に座っていた。
小人も、どうやら塩麺らしい。
「美味しくないよ、それ」
アースはそう言って、空腹をどうやって紛らそうかを考えていて、ふと思った。
「ねぇ、キミ。どうして私の名前、知ってるの?」
「え?!」
小人は、麺を啜る寸前の体勢で、凍り付いたように動きを止めた。
小人の頭をゴンッと叩いて持ち上げる巨人が、「失礼した」と言って立ち去ろうとしたが、アースは「待って」と呼び止め、ついでに小人の腕も掴んだ。
「痛い、痛い、痛い!」
「ム!
済まぬ、放していただけぬか?」
「話を聞かせていただければ。
隣、空いてますから、どうぞ」