近似タイプ対戦

第27話 近似タイプ対戦

 どうやら今日は、徹底的に厄日らしい。
 
 相手の放った必殺技を、俺は危ういところでガードする。あまりに距離が近い為か、かわす事が出来なかった。
 
 続いて放たれた通常攻撃には、ショットガンでカウンターを返す。
 
 これもかなりきわどいタイミングだったが、コレを当てなければ負けてしまいそうだ。
 
 現に俺の体力は、既に半分が失われている。
 
 接近戦を挑んで来るタンクタイプと当たったのは、コレが初めてだったので、序盤に後れを取ってしまった結果だ。
 
 こんなに疲れる試合は、あのジャンヌ・ダルク以外では初めてだ。
 
 接近戦は僅か数センチが勝負を分けるというシビアな戦いなので、体力・精神力共に、消耗が大幅に早まる。
 
 疲れの残っている今の俺が、最も避けたかった展開だ。ジャンヌ・ダルクが相手だったのなら、諦めていただろう。
 
 まともにヒットすれば、ショットガンは確実に相手を転ばせる。
 
 俺はその隙に間合いを開く。ショットガンを使うのに、最も適した間合いに。
 
 そして起き上がりにショットガンを重ねるが、しっかりとガードされてしまう。
 
 間合いは即座に詰められる。ショットガンの次弾を撃つ間も無い内に。
 
 左手の拳銃ではその動きを止められなかった。
 
 正面から撃たれた弾丸をガードする間に、今度は横へと回り込まれる。
 
 俺に似た、プレイヤーの機動力を活かした小回りで勝負するタイプの敵だ。その設定は、恐らく俺と同じ。
 
 ……コイツ、このゲームの特性を、しっかり理解していやがる。
 
 横から撃ち込まれた弾丸は、飛び上がって避ける。コレをガードしていては、負けてしまう。
 
 至近距離から撃たれただけに、その動きを読んでいなければ避けきれそうになかった。
 
 が、幸い、そのタイミングの取り方は俺と大差が無かった為、俺が読み勝つ。
 
 今度は逆に、俺に攻撃のチャンスが訪れた。
 
「スペ――」

 この位置関係。ある必殺技を使うには、滅多に無い絶好のチャンスだった。
 
 その名前を叫びかけて、すぐに思いとどまった。
 
 この技は、見せてはならない。これこそが、俺の持つ唯一の希望なのだから。
 
 相手が飛び上がる。同時に俺のショットガンも、真下に向けて大量の銃弾をばら撒く。
 
 迎撃された敵は、再び地面に平伏す。
 
 これでようやく、主導権が手に入った。
 
 そう思ったのも束の間。ジャックが地面に降り立つ前に、そいつは地面に起き上がっていた。
 
「早い!」

 起き上がるまでの時間は、キャラクターのスピードに影響される。だから遅いだろうと思っていたのが甘かった。
 
 何かコツがあるのだろうか。ジャックが起き上がる時と比べて、およそ半分の時しか掛かっていないように思える。
 
「キングス・ガード!」

 俺が咄嗟に出来たことは、ガード必殺を発動させ、防御姿勢を取る事だけ。
 
 それに一瞬遅れて、敵が必殺技を使う声も聞こえた。
 
 結局は。
 
 そのガード必殺が俺にあったことが後に大きな差となり、時間は掛かったものの、俺は無事にその試合を勝ちあがる事が出来たのだった。