転売屋抗争

第43話 転売屋抗争

 結果論、研究室を訪れてもノトス教授はおらず、部屋の扉には鍵が掛かっていた。
 
 ムーン=ノトスは、その時、コアの相場を調べに行っていた。
 
 転売されず、かと云って本当に必要な者には売れるように。
 
 それが例え、10年に一個売れるとかでも構わない。その位の卸値を見極めて。
 
 転売屋が買うなら、それでも構わない。だが、ただでさえ10年に1個位しか売れない物を、転売屋が商売に使うとは考え難い。
 
 結局は、値上げしか手段は無かった。薄利多売では、転売屋に買い占められる。
 
 そもそも、その危険性から滅多に売れては困るものなのだ。
 
 そもそも論で云えば、コアの相場が金貨70枚と云うのは、とんでもない高値なのだ。
 
 それでも、極一部の転売屋は買った。そして、実用して中古になったものを、金貨77枚で市場に価格を提示した。
 
 売れれば儲け、売れなければ自分用の実用品。そうすることで、必ず利になる商品にした。
 
 それに対してムーンは、7㎜玉のコアの卸値を金貨80枚にした。
 
 それに対して転売屋はコアの値段を金貨88枚に吊り上げ。
 
 ムーンは当然、金貨90枚に吊り上げる。
 
 転売屋は99枚に吊り上げ。
 
 ムーンは100枚に吊り上げる。
 
 転売屋が買えば買う程、ムーンは儲けた。
 
 ピタッと止まれば良いのにと思っていたが、ソレが金貨200枚を超えても転売屋との戦いは続いた。
 
 そしてムーンは、一つの大きな決断をした。
 
 即ち、7㎜玉のコアを金貨700枚で売りに出す事を。
 
 ココに至って遂に、転売が利かなくなった。――買えないのだ、ソレ以上の金額では。王侯貴族ですら。
 
 それでも、実用を兼ねての転売で、1点は売れた。
 
 ムーンは直後、金額を金貨777枚にした。この金額になると逆に、「縁起が良い」と、王侯貴族はほんの数点、買うようになった。
 
 ――残念な事に、その内数点が転売に出された。ムーンは即座に、金額を金貨999枚に吊り上げた。逆さまにすると縁起の良くない数値であるからと、忌避きひする者が多数現れ、今度は、一切売れなくなった。
 
 だが、ムーンはそれで由とした。
 
 ムーンは亜空間にコアを収納してある為、盗難の恐れも無かった。
 
 そして安心すると、ムーンは研究室に向かい――アース達と出くわした。