第3話 警告
ある日、卯辰が目を覚ますと、沢山の警告文が示されていた。
運営側が、本格的にバグ技等の取り締まりをして来たのだ。
ステータスも正常に成長していたらの数値をキチンと計算して与えられたし、全体完全回復魔法も使えなくなった。
それでも、レベルキャップまで届くだけの経験値は積んでいたし、味方全体を大きく回復する魔法も習得していた。
大きな問題は無い。卯辰はそう判断し、命令を下すのはよっぽどのケースに限ると決めた。
でももう、命令を下すこと自体を禁じられている可能性は高かった。
「今まで程の働きは出来ない」
卯辰は、そう仲間に告げるが、今までが異常だったのだ。よりスリルのあるボス戦を出来ると、仲間の多くはそんな卯辰を歓迎した。
卯辰のキャラクターの職業は、『偉大なる賢者』。攻撃魔法も使えるが、主に回復役を果たす職業だった。
そして、卯辰の能力にリミッターが付いたことで、『回復魔法を使う余地を十分に残した上で』、攻撃魔法の使用が許可された。
コレにより、卯辰はリキャストタイム等、色々と苦戦をするようになって来る。
だが、七割方は勝てた。どちらかと云うと、八割に近い七割方の勝利だった。
取り締まりをされる前は、十割近く勝っていたのだから、勝率は落ちた。だが卯辰は、それを『丁度いい』と判断した。
二割ちょっとの敗因も、当然、卯辰の弱体化が原因とも言えたが、卯辰のそれまでの回復能力に頼り切った、『舐めプ』がより原因として強かった。
ココに来て、卯辰のプレイ動画にも視聴者が付き始めた。
巧妙に行使する、リキャストタイムを考えた回復魔法の使用。そう、卯辰の技術の向上が、目に見えて表れたのだ。
参考になるプレイ動画。同時に、見世物としても、十分に成立する巧みなプレイ。
ようやく、そう、ようやくだ。ようやく、eスポーツプレイヤーとして恥じないだけの収入を、卯辰は得始めた。
ゲーム内でもトップクランとして有名な『創世の魔導士』の中でも、トップパーティーの一員として、卯辰は働いていたのだった。
そもそもが、回復役と言われる役割は、大変なのだ。
誰か一人だけを回復し続ければいいわけでは無い。
パーティー全体で、脱落者を出さない事が第一意義なのだ。
卯辰も、最初は攻撃する余裕なんて無かった。
だけど、ほんの時々、攻撃する隙を見つけては、攻撃魔法を敵ボスに叩き付けていた。
しかし、卯辰は同時にこうも思っていた。
――攻撃される側の者の気持ちは、如何程なのだろうかと。
それに疑問を持ち始めてから、再び、卯辰は攻撃せずに回復役だけを行う役目に戻った。
その疑問に『答え』を求めて、卯辰はそのゲーム『審判の日』をプレイするのだった。