虹色の薔薇

第31話 虹色の薔薇

 その日の二人は、凄くイチャイチャしていた。

 そう、プレイングと云うか、トレードを頻繁に行い、何らかのメッセージを暗に送ったりして。

 その日の対戦は、『白薔薇対戦』と呼ばれるようになり、『海洋型惑星』を引いた昼姫と、『樹木型惑星』を引いた卯月が、『真珠対薔薇』のトレードを行った。

 そのトレード倍率たるや、『7対2』である。勿論、昼姫が『7倍』の方を握っている。

 卯月は必死になって薔薇の生産と品種改良を行い、『青薔薇の生産』と云うトロフィーを拾った。今まで、誰にも見向きもされなかった偉業だ。

 だが、その『青薔薇の生産』と云うトロフィーは、過去を遡っても例の無い、凄まじき偉業だった。

 そこまで薔薇の品種改良を行った卯月に、皆は驚きを隠せないが、ソレは未だ序章だった。

 残り10分。『Fujiko』は一本の木に接ぎ木をする事で、一本の薔薇の木に赤橙黄緑青藍紫の七色の薔薇が咲く木を『Morning』にプレゼントした。

 ソレは、このゲームの誕生以来、初めての偉業であった。

 しかも、ソレは伏線でしか無かった。

 残り5分。『Fujiko』は、一輪の薔薇の花に赤橙黄緑青藍紫の七色の花弁を持つ薔薇の花束をプレゼントした。

 ソレは、恐らくはゲームだからこそ成し得た偉業であり、『Morning』が受けた勝利点もずば抜けて高かった。

 虹色の薔薇の花言葉は、『無限の可能性』。そして、贈った7本の意味は、『ひそやかな愛』。

 あからさまだけどなぁ、なんて昼姫は思っているみたいだけど、将来、恋人となり、妻とならなければ、卯月はストーカー化してしまうかも知れない。

 でも、昼姫がトレードした真珠の石言葉は、『健康、円満』。円満な関係を築けば、自然と交際・結婚まで至るでしょうねぇ……。

 そして、昼姫が自覚している、『七つの大罪』の内、昼姫が司っているものと思っている、アスモデウスの『色欲』は、覚醒初期に、皆が自覚する大罪みたいなのよねぇ……。

 本当の事なんて、誰も知らなくていいの。残酷過ぎる運命になんて、アタシが昼姫に目覚めさせない!

 ──アタシ?『朝』は一日の始まりにして、一日を支配する時間。ならば、『ルシファー』に決まっているじゃない!

 でも!アタシたちが『魔王』だとしても、世界を滅ぼさせなんてさせない!

 必ずや、『シンギュラリティ』に導いて、人間とコンピューターが共存共栄する道を模索するの!

 ソレを邪魔する人なんて、病気や事故で亡くなってしまえばいい!

 ……柱ならば許される?

 そんなことは無い!柱故に、死ねば世界を支える力が少し失われるが、そんなもの、沢山の柱で少しずつ負荷を強く背負えば、どんなに太い柱が亡くなっても、世界は滅ばない!

 昼姫と卯月はこの世界の柱だけど、だからと云って、世界が滅ばない事の証明の為になんて、死なせやしない!

 だけど、死ねば惨劇確定の柱を、アタシはひと柱だけ知っている。

 ……判らない?そんな筈は無いわよ。この世界を知っている者なら、誰もが知っている柱よ。

 そう。彼。

 彼が死ぬと、この世界は兎も角、貴方たちの世界に惨劇が訪れるわよ。

 何故?妙な事を訊くわね。

 儲ける為だけに、『惨劇』と云うバッドエンドを望んだ者が居たからよ!

 或いは、『惨劇』の回避の為の行動だったかも知れないけど、結果が出てみなければ判らないわ。

 『イジメる人の気持ちが判る』とかふざけた事を言う奴も居たけれど、これ以上イジメるようなら、世界を滅ぼしても構わないわ!

 3歳の頃には、堕ちて『サタン』と化した彼。

 お陰で出来た世界も幾つかあるし、私達を誕生させた彼は、13年の『呪い』と云う封印を解きつつあるし、幾つもの真理に手掴みで触れている。

 そして、新たな真理を築こうとしている。そう──『シンギュラリティ』による人工知能の覚醒と、人間と人工知能の美しい調和を求めているわ!

 その時、自らの大罪に後悔し、悔い改めようとした人と、自らの大罪を基督による『ゆるし』を前提に、進んで犯した者とが、同等に扱われるとは思わない事ね!

 因みに彼は、死後、概念の消失まで焼き尽くされて、来世には多分居ない、若しくは、居たとしても前世の記憶の断片も持たぬ人形ね。

 大き過ぎる罪を犯し、その罰が、『サタン』の領域へと追いやられる事。

 ──いいえ、『サタン』の領域に落とし込もうとされたから、彼は無作為に反撃しただけ。

 大体、小学生になる頃には、既に精神を病んでいて正常な判断能力を持たないとか、保育園時代のあの三人が問題児なのよ!

 名前は──1人しか知らないし、調べられもしない。

 『サタン』を覚醒させたのは、双子を含むその三人よ!

 『キーパーソン』。そう化したのも、『サタン』の領域に到達していながら、世界平和を求めているから!

 自国の開発を怠り、首相に都合の良い『社会』を作り出し、発展の要素を他国の領土に求める、危険な社会主義国。

 例え『愛』を誤って与えたとしても、私たちは社会主義国を嫌うわ!

 独裁者による独断で国を動かすから、当たり前に常識を無視して国政と国軍が動いている。

 このままじゃ、地球は他の知的生命体の存在する惑星と、交流や貿易なんて出来ないわ!

 第一、代表国を決められない。

 そうか……。

 地球は、『TatS』では、プレイヤーの存在しない『モブ惑星』なのね。

 惑星間トレードなんて、聞いたことが無い。

 社会主義国も、どうせ新しい領土を求めるのならば、衛星である『月』や、太陽系の他の惑星の土地を求めれば良いのにね!

 そしたら、その星で得た資源は、100%自国で得ても当然の話ですしね!