虎白の父親事情

第16話 虎白の父親事情

「緋三虎は、無事なんだろうな?」

「血を吸われている可能性を考えたいけど、祖父ちゃん、生身の人間の血は、もう飽きたそうだからさほど好みはしないし……。

 少なくとも、命に別状は無い事は分かった筈でしょう?」
 
「無事、帰って来るよな?」

「緋三虎の気持ち次第」

 ほとんど家出。パフェは、協力する事すらバカらしいと思う。
 
 が、今の虎白の様子を見て、放っておくほど、薄情じゃない。
 
「行きましょう」

「……何処へ?」

「聞いたでしょう?何処に居るのか!正確な住所まで!」

「そ、そうか。

 金は、持って行った方が良いんだよな?」
 
「身代金として、払うつもりがあるならね」

「そのくらいなら、娘の命と引き換えなら、安いもンだ!」

 緋三虎が、虎白をあまり評価しない理由。それが、パフェにも何となく分かってきた。
 
「虎白オジサン、家でも、緋三虎の言いなりでしょう?」

「だって!逆らったら、飯を作ってくれないんだぞ!?」

「自分で作れないの?」

「コンビニ弁当の方が旨くて安上がりだ」

「家事は?緋三虎に任せっきり?」

「……それに近い」

 嘆息するパフェ。
 
「努力する気は無い訳?」

「任せられないと、見限られている」

「緋三虎が家を出たら、どうするわけ?」

「家政婦を雇えば良い」

「金で解決する訳ね」

 どうやら、虎白も娘の目から見た自分がどう映っているのか、理解してきたようだ。
 
「だって!」

「言い訳は、見苦しい!」

「……娘にも、何度もそう言われている」

 悲し気な虎白に、流石にパフェも同情の余地を見出した。
 
「言い分を、聞いて貰えない訳ね」

「そうなんだ。

 俺の気持ち、分かるか?」
 
 八方塞がり。手も足も出ない。言葉を綴る事すら許されぬ。
 
 そりゃ、泣きたくもなろうというお話しだった。