自我の発生

第18話 自我の発生

 ドンッ!
 
 アース達三人が昼食を食べ終えようと云う時。
 
 割と近い場所から、爆音がとどろいた。
 
 ピシッと、窓ガラスに亀裂が走る。
 
「キャッ!」

 アースはその時、凄まじく不吉な予感がした。
 
「――何じゃ?」

「近かったね。――気になるね」

 アースは、時計を見た。
 
 昼休みは、あと30分も残っている。
 
「私、ちょっと見て来ます!」

 アースは学食のお盆を持って、急いで片付けに走った。
 
「待て!儂らも行く!」

 カメットもリックを急かせてお盆を持って走った。
 
 学食を出て、騒ぎが起きていそうなのは、研究棟。
 
 走って向かい、アースが瓦礫がれきと化した研究室でノトスが立っているのを目視し、ムーン=ノトスの側からも視線が合ったと云うのにだ。
 
「近寄るな!」

 よりにもよって、拒絶の言葉。
 
 ノトスの向かう方角には――正八面体の、水?があった。
 
「チッ!まさかの100%正確率で、自我を持ったかよ……!!」

 集まって来る、野次馬たち。ムーン=ノトスはそれに危機感を感じた。
 
「居ね!さっさと立ち去れ!ココは危険だ!」

 ムーン=ノトス自身は、オート・イージス機能で爆発によるダメージは殆ど――いや、恐らく一切――無い。ほぼ接触していた右手にも、傷一つ無さそうだった。
 
「道理で秘匿する筈だ!強さも分からぬ、攻撃の意思の有無も!

 あの一撃のみで沈黙しているのが、唯一の救いよ!」
 
 冷気を帯びて、徐々に霜が降りて行くその正八面体Xコアは、ひょっとしたら、周囲に活動するに十分な温度が無いのかも知れない。
 
 だが、場所は屋外。少し風が吹けば、その冷気も少しずつ失われて行くだろう。
 
 ムーンは虹の刀『Alpherion』を抜いた。すると即座に正八面体Xコアに斬りかかった。
 
 頂点の先端をほんの僅かに斬り落とした。だが、ソレでムーンの目的としては十分だった。
 
 正確率が下がった正八面体Xコアは、浮遊状態も保てず落下し、そのまま沈黙した。
 
 ムーン=ノトスはチラリとアースの方を向くと、落ちた正八面体Xコアを拾って、立ち去った。