第42話 自分探し
俺は、俺の兄が途轍もない苦しみの果てに、三日間で死んだ事を悟った。
産まれる際に、首が締まり、脳への血流が止まって脳死し、三日だけ生かされたのだ。
神とは、なんと残酷な存在だろう?
『将来の魔王だから』だろうが、獅子の運命に産まれたからと言って、産まれる時に首を絞めるなど、あんまりだ!
道理で、俺の中の魂の何処かが拒絶反応を示す筈だ。
『獅子身中の虫』として、『蚊』だけでは足りないと言うのか⁉
俺は『蛆』だったから、『氏神様』でもあり、辛うじて生かされたのだろうが、それにしても、この人生は過酷を極める。
『楽』を極めて『極楽』を望む気持ちが、逆に人生を過酷にしたのかも知れないが、それにしたって、ココまでイジメる事はないだろう?
これでも容赦した方、か。その分、悪夢の方は酷いけどな!
言葉にすることも憚られる、酷く汚い悪夢だ。
何度、その悪夢を見せれば気が済む?ああ、コレも20億8千万回かよ!つーか、そんだけの回数の夢を見るだけの寿命は与えてくれるのか?!
年に365日、あと50年と考えても、18250回。一日に100万回以上、悪夢を見なくちゃならない計算だぜ?
もし。仮に、俺が織田信長と同じ49歳で亡くなるのだとしたら。
俺は毎晩、6千万回位の悪夢を見なければならない。
それによって、毎晩、悪夢に魘されて眠れないのだとしたら。
薬を断てば、5日間で幻覚を見られるようになる。
母の方が長生きしそうだが、俺がもしも母よりも後に亡くなるのだとしたら、試しに薬を断ってみるのも一つの手かも知れない。
いや、だが、アレは病院だったから見られたのでは無いか?
でも、試しにどんな幻覚を見るのかを試してみるのも面白いかも知れない。
最近、頓に『強くならなくていい』と云う言葉を目に耳にする。だが、その一方で、『弱い奴は生き残れない』と云う歌も聴く。
――いや。『弱い奴は罰が当たる』との解釈も出来る。
冗談ではない。コレ以上、罰が当たるなんて、勘弁していただきたい。
悪いこと?したよ!いっぱい!
だから、警察に『公開処刑にして欲しい』と相談した事もあるよ!でも、日本にはそんな制度は無い、と!
コレ以上、罪を重ねたくない。だけど、プロのクリエイターだって、世界の寿命を犠牲にした作品を作って儲けているじゃないか!
地球の温暖化が止められないのは、昔の有名な作家が、地球が冷える事の無いようにと作品の中で描写していることのバタフライ・エフェクトである可能性は、断じて否めない!
きっと俺は、娯楽的な小説ではなく、文学史に残る有名な作品をもっと沢山読んでおくべきだったのだろう!
でも!今更!幾ら、人生をやり直すのはいつでも遅くないと言われているとはいっても、読みたくも無い本を読み続けるなんて、ホントにそんな苦行を積まねば、今以上の作品は書けないと言うのか?!
読みたい作品を読んで、書きたい作品を書く。それじゃダメなのか?!
何のために執筆しているのか。
恐らくは、『自分探し』の一環なのだろう。
自分で書いておいて、そう思う。
でも、俺はほぼ自分を見つけているのだ。
正しく、サタンでルシファー。
二人分の魂が宿った人間だから、それを『正しく』と言える。
偶に来る初動的な怒りは、『サタン』の為す業だろう。
『サタン』を討とうとした自分は、勇者を気取った『ルシファー』の為す業だろう。
自分でも、自分に宿る『サタン』は怖いのだ。
そんな俺に、アイツは殺気を向けて来た。アイツ……ベルゼブブだ。
醜く肥え太った、蝿の王。どうやら、俺を『蛆虫』扱いして、下に見ているようだ。
屁理屈を捏ねるだけあって、『屁』のような存在だ。
ベルゼブブを『どげんかせんといかん』のに、誰も理解はしてくれない。
ベルゼブブの寿命を77歳にしたのは、俺が犯した過ちの中でも、大きなものであるだろう。
また神成り(雷)が鳴っている。
恐らくは、レベル7到達者が現れた。
そろそろ、お気づきだろうか?
俺の他の作品に、『ウィルス』に関する記述があり、その記述をインターネットに載せている限り、全てのウィルスが駆逐されることは無い。
まぁ、全てのウィルスを駆除したら、善玉のウィルスも存在するのだから、困った事態になるのだが。
俺は個人的に、その作品の削除が必要では無いかと考えている。