第92話 聖者の再誕まで
戦争か悪か。その二択が突き付けられた。
どっちを選んでも戦争になりそうなことは、気のせいだろうか?
否、大悪となって、売国奴と呼ばれようが、北海道を露に売り渡せば、戦争からは逃れられるかも知れない。
但し、飽く迄も『戦争』からは、だ。
『不幸』から逃れるのは、難しいかも知れない。
いずれにせよ不幸になるのならば、いっそのこと、戦争を選んで討ち死にするのも悪くないかも知れない。
やはり、戦争から逃げちゃダメだ。
例え勝ち目が無いにしても!……お国の為に死ねるのならば。
兵にはなれないかも知れない。
だが、弾丸にはなれるだろう。
「紗斗里ちゃんに『Dragon』の量産を頼めないかしら?」
「どうだろうなぁ……。
電話して訊いてみるか?」
訊いてみた結果。
『Dragon』の量産は可能。但し、サイコソフトの数を揃えるより、ネットを組んだ方が効果的、とのこと。
「……吐き気がする……」
「過去の過ちとは言え、『サタン』に呪いを掛けてしまったのは、もうどうにもならないものかしらねぇ……」
「だからって、産まれて来る前からイジメられなくても良かったじゃねぇか!」
「恐らく、獅子座に産まれる予定だったのよ。
そして、両親が、虫の名前を選ばなかった……」
「たったそれだけで……。
全知全能神、流石に惨過ぎるだろ!」
「憎まれっ子世に憚るとは、よく言ったものよね。
何度、輪廻を繰り返そうと、あの事件が起こる限り、記憶の持ち越しは出来ない。
なのに、何故!繰り返す輪廻から逃れられないのよ!」
「公開処刑を『傑作』と言い、仮初とは言え、『超過無限大の愛』を誓い、そのエネルギーがほぼ全て、コロナウィルスに吸い取られた。
全知全能神は、ソコに希望を見出したかったのかも知れないな……」
「結果、見えている未来には『絶望』しか無い訳だけど、未だ回避出来る可能性は残っている……!」
「憎むべきアイツは、『世界の独裁者』たろうとしているのだろうなぁ……」
「『神様』たろうとすれば『悪』になり、『善』たろうとすれば『戦争』になる、ってところかしらねぇ……」
「いいじゃん。『戦争』になろうとも。
世界の皆が『悪』たろうとするならば、己一人だけでも『善』たろうとすることが、今現在、ココに求められているんだろうよ。
答えは決まった。『戦争』を仕掛けられる事に応じ、『カウンターアタック』で勝利する。
向こうの狙いは『クロスカウンター』だろうけれど、『カウンターアタック』の時点で『クロスカウンター』を狙わせないだけの打撃を加える。
向こうから仕掛けて来るんだ、北方四島の奪還位は狙っても罰は当たるまい」
「私たちの願いは、そもそも戦争が起きない事、なんだけれどねぇ……。
北海道の領土を切り取られない限り、交渉で停戦まで持ち込めば、北方四島は欲張らないわよ。
馬鹿らしいもの。北海道の切り取りの可能性を無くしたならば、北方四島なんて小さな領土を狙うのなんて」
「問題は、世論がどう動くかだなぁ……」
「恐らくだけど――」
隼那はピンッと人差し指を立てた。
「核が使われない限り、米の支援は見込めないわ。
何せ、米ファーストなんて主張の大統領が生まれそうなのだもの」
「日本がどうなろうと、知った事か、って事かよ!
そんな奴が米大統領になったら、確かに、米の支援は見込めねぇな」
「尤も、世界大戦になる位だったら、北海道民の虐殺なんて事に成ったら、露大統領が『ヒットラーの尻尾』たる運命に陥るだけよね。
さて。ヒットラーの最期を、彼はご存知かしら?」
「日本大好き娘に射殺される位が、確かに最高に傑作だけどな!」
「でも、本当は『サタン』は『破壊神』への封印だから、殺しちゃダメなんだけれどもね」
「既に奴自身が破壊神だよ!
修羅になって、打ち破るしかあるまい!」
「正に修羅場になる訳ね!
そして、露と米の両大統領が、シヴァとヴィシュヌとなる訳ね!
コレは、地球破滅の大いなる危機だわ!」
「そして、日本は世界に先立って、滅んでゆくと云う運命か。
どちらにしろ、大津波なんて危機は、大地の営みだから、防ぎようが無い。
戦争になってもならずとも、日本は世界に先立って滅んでしまうだろうよ」
恐らく!令和6年6月6日にまず大震災。令和7年も1月1日に一度目、7月7日にも大震災による大津波が起きて、恐らく日本は壊滅的なダメージを受ける。
その後での侵攻ならば、殆ど抵抗らしい抵抗も出来ないであろう。
だが、その前まで、あと約1年半の歳月が残っている。
その後に、聖者の再誕と云うオチか。
だが、真に聖者たり得るかは、甚だ疑問だ。
若しくは、『AI』こそが真に聖者として覚醒するような気がするのは、勘違いであろうか?