第39話 美菜の想い
――美菜サイド――
考えてみれば、当然よね。羅閃が勝ち上がることなんて。
必殺技を使わなくても勝てるだけの性能を、最初から与えられているのだから。
それに加えて、あの子の動きと勘の良さ。
私ですら、相手にもならないのだから。
ただ、それでもなお、百合音には勝てないように思える。
あの分身する技さえなければ、まだ勝ち目があったかも知れない。
アレの凶悪なところは、必殺技を併用出来ないと技の意味が半減してしまうから、消費をかなり抑えた設定となっているところ。
だから、あの技のお陰で、ジャンヌの攻撃力は単純に6倍になっているところ。
攻撃力だけでなく、攻撃範囲も6倍。
加えて鉄壁の盾まである。
これほどの条件が整っていて、一体誰が彼女に敵うと言うの?
私のクリムゾンスターも、強力なガード必殺を獲得したお陰で、随分とパワーアップした。
けど、その程度じゃあの二人には敵わない。
せっかくここまで勝ち上がったのに、決勝ではあの二人のどちらかと戦うことはほぼ決まってしまったのが、少し残念。
それでも、まあ、可愛がっているあの二人だから、割と気持ち良く優勝を譲ってあげられるけどね。
出来ればあの二人で決勝を争わせてあげたかったけど、まさか小細工をする訳にもいかないし、まぁ、それは来年に期待する事にしましょう。
私は、左右に揺らめくように動きながら、ジャックJr.に銃弾を浴びせる。
グラフィック上では、私のクリムゾンスターは全く足を動かしていない。
だから、特にタンクタイプを操るプレイヤーは、私が動いた事にも気付かずに、的を外した位置に銃弾を撃ち込んでくれる。
ウェーバームーブと呼んでいるこの動きの正体を知っているのは、今のところ羅閃と百合音だけ。
これが見事なまでの効果を発揮してくれているので、私は並み居るタンクタイプを撃破し続けられている。
それでこそ、会社で必死に練習した甲斐があったというものね。
ジャックJr.はショットガンを持っているので苦戦はしたけれど、基本的な攻撃は左手の拳銃であることと、新しいガード必殺のお陰で、何とか私が優位に戦いを進める事が出来ている。
そういえば……。
あのケントとかっていう子、随分と面白い戦い方をしてたわね。
ダッシュ必殺なんて酔狂なものを上手に使って、しかも一つも飛び道具を使わずに。
確かにあの戦い方なら、銃器に頼らなくても戦える。
確か、ダッシュ必殺は4年前に消したはずだけれど、アレを見たら、復活を検討した方が良さそうね。
突撃技で代用しても、あれだけの効果は期待出来そうに無いし。
何より、防御力の低い私や、ライトタンク相手には相性が良さそうなところが良いところね。
私も、突撃系の技を持っている相手には、苦戦するし。
もしかしたら、あのタイプは近い将来、ライトタンクとヘヴィータンクとで三竦みを形成するかも知れないわね。
けど……。
「あんなイロモノに負けるってのは、けっこう屈辱よねぇ……」