第14話 緋三虎の実力
カァン!
ゴングの音で始まり、そして三秒後。
大和は、宙に逆さまに浮いていた。
その腹に叩き込まれる、ハイキック。
ロープまで吹っ飛んで、跳ね返るとリングに叩き付けられる。
……動かない。
意識が無いらしかった。
「李花。さっき父さんにやったの、お願いして良い?」
「手加減しなさい、って。内臓、破裂していたらマズいよ?」
すぐに“氣”を叩き込むと、大和は意識を取り戻したらしいが、震えている。……怯えているのかも知れない。
「本当は、虎白オジサンとも試合したかったんだけど、大丈夫?」
「……今日はやり過ぎだ。悪いが、帰って貰えないか?」
視線でパフェが理由を問うと、虎白も、大和の方へ向けた視線で返答する。
「あっちゃー。自信、喪失させちゃった?」
「しばらく、自信を回復させるためのスパーリングやら何やらが必要だな。
まぁ、圧倒的強者に負けた経験、ってのは、育てれば有望な種にもなる。
流石に、その種を潰されてはたまらんよ」
パフェも緋三虎も、さして汗はかいていない。着替えるとすぐに、多少の詫びの言葉を残して、去った。
「あのー……。
俺ら、頑張ればあの二人ぐらいに強くなれますか?」
「不可能だ」
即答だった。
「ヘタすりゃ、俺より強いかも知れん」
二人は、金輪際ウィリアムには近付かぬことを心に誓った。