第33話 精密作業
爆発現場まで、ムーン=ノトスは文字通り飛んで駆け付けた。
其処には、再び壊れたノトスの研究室と、何かに怯えるサトゥル、そして、宙に浮く球形のコアがあった。
ノトスは地面に降りるのと同時に、宙に浮くコアに対してほんの僅かな傷を付けるように、刀で斬りかかった。
浮くのを止め、落ちるコア。それをノトスは受け止める。
「怪我人はいないか!?」
周囲に呼び掛けるが、反応は無し。人が転がったりしている訳でも無い。どうやら、怪我人は無さそうだ。
「サトゥル、100%真球のコアを作ったな?」
「え!?そこまで精度は高くないと思うよ?」
「……偶発的に出来た、か。
――まさか、古代のコアは、作る度に爆発を起こしている……?」
100%真球コアが、自我を持ったのではなく、作成時に爆発を起こすものなら……。
だがしかし、それでは宙に浮いていた理由に説明がつかない。
或いは、両方の説が同時に成り立っているとしたら――
「確かめる価値はありそうだ。
が、作る度に爆発を起こされていては、ヘタな場所で作る訳にはいかないぞ?」
100%真球コアでは無いにせよ、コアの操作がコアと使う人とのコミュニケーションの結果、操れるものだとするならば。
例えば、テレパシーのようなもので。
「しかし、何度も研究室を壊していては、次は注意では済むまい。今回で警告と云ったところか?」
ノトスは、自身の『αシステム』で研究室を直す。お隣さんにしたら、いい迷惑だろう。
「サトゥル。次からは、精度をもう少しだけ下げて作成してくれ。
――そうだな、今度からは、直径3㎝のコアを作ってくれないか?
そして、100%真球コアが作れると思ったのなら、次は直径2㎝、次は直径1㎝のコアだ。
その更に次はミリ単位で刻む。
直径6~7㎜のコアが、最終目標にしよう。
サトゥル、その条件で頼めるか?」
「別に良いけど……。何でそんなに小型化を目指す訳?
それなら最初から、『Alpherion結晶』一つ分のコアを作れば良いじゃないか。
それじゃダメなの!?」
「それは……余りに小さすぎて、目視で見つける事も困難になる筈だ。
そこまで小型化しては、内部に魔方陣も刻めない。
よって、コアとして機能しない」
「ふーん……。それなら仕方が無いなぁ。
取り敢えず、3㎝のコアだね?
じゃあ、早速やってみるよ!」
この時、ノトスもサトゥルも、『100%-0.0……1%』と云うそんなギリギリの高精度のコアを作ることが、如何に難しいのかを考えていなかった。
より正確に云うのなら、予想もついていなかった。
それならば、『100%真球』のコアを作ることの方が遥かに簡単であることを。