研究の成果

第30話 研究の成果

 鬼とは本来、恐ろしい存在では無い。
 
 悪人の秩序を保つ存在だ。
 
 故に桃太郎にこうある。
 
 鬼が島に鬼など『居ぬ』、故に『去る』、これを『記事』にする。故に犬、猿、きじを手下に鬼退治へと向かった物語が『桃太郎』なのだ。
 
 つまりは、悪人で無くば鬼は恐ろしい存在では無い。むしろ、金銀財宝をくれる、桃太郎にとっては親切な存在であったのだろう。
 
 ――閑話休題。
 
 『混沌の神』と『秩序の鬼』のXコアが出来上がった。
 
 コレで、確か18属性。
 
 コアの種類が増えたのは良いのだが。
 
 今のところ、使う宛は無い。
 
 だが、サトゥルには量産して貰っている。
 
 ボレアスにも研究はして貰っているが、ムーンには研究の他に大事なことがあると考えている。
 
 『αシステム』の普及は、サトゥルの作成したコアを一部売却している事から、徐々に普及してゆくことは最早確定事項だ。
 
 危険性を考えて『許可制』にしているが、『免許』を持っている者は意外な程少ない。
 
 手に入れてから『免許』を取ろうと思っている者は、まず間違いなくコアを購入出来ない。
 
 『免許』を取ってから、コアを入手出来たらおんの字。実際は、『免許』を手にしても、何年もコアの入手待ちという者が少なくない。
 
 しかも、コアはサトゥルが作り上げて完成、と云う訳では無い。コアの内部に立体魔方陣を描いて、初めてコアとなる。その立体魔方陣を描く作業は、ムーン=ノトスが仕上げている。
 
 ボレアスに渡すコアは、立体魔方陣を描く前のもの。彼には、それで十分だしコアの性能を自身で決められるのは、大きなメリットだからだ。
 
 故にムーン=ノトスは、日に三つのコアを週に五度、ボレアスに届けている。
 
 サトゥルの方は、大分コツも掴んで来たようで、「恐らく直径3㎝……いや、4㎝なら作れると思う」との心強い言葉。ムーン=ノトスは、サトゥルに日に三日のノルマの他には、直径4㎝に挑戦して貰い――四日目で、作れるようになった。
 
 日に三つ、直径4㎝のコアを安定して作れるようになって来てから、ムーン=ノトスはそればかりを作るように、サトゥルに指示した。
 
 ボレアスへの納品も、4㎝玉だ。
 
 最小限のコアを作れるとして。アースの持っている指輪に備わったコアのサイズは直径6ミリ。最終目標は、このサイズだろう。
 
 ただ、そこまでのサイズになると、コア内部に立体魔方陣を描く技術が、相当高いものが要求される。そこは、ムーン=ノトスが達成するしか無い。
 
 ムーン=ノトス自身も、それなりの自信はあった。
 
 ただ、そこまでのサイズにまで抑える為には、どれだけの年月が掛かるものであるのか、はなはだ疑問であるのだった。