病魔撲滅作戦終了

第36話 病魔撲滅作戦終了

 西暦2019年、冬。

 隼那と恭次は、救急車による『聖櫃』の回収の場面に居合わせた。

「良かった、『聖櫃』は救急車で回収されていたのね!」

「つーか、角が壊れて、木乃伊ミイラの片足が見えそうになっているぜ?」

「ソコから旧い病魔が広まったのね!」

 だが、事が事だけに、隼那と恭次が出ていく訳にもいかない事態に陥っていた。

「――動くわね。追うわよ!」

「おう!」

 ところがだ。二人は、『聖櫃』を見失っていた。

「何処行った、『聖櫃』」

「――判らないわ。

 でも、アイツの観察は続けましょう!」

 そして、二人は外部から透視でソイツを見守り、そして――見失った。

「え⁉何処?!」

「アイツ、『常世』に入りやがった!

 マズいぞ、俺らはソコからは入れない!

 ――紗斗里ちゃんを呼ぶか?」

「同じ『常世』の同じ地点に行くことは出来ないわ。

 でも、起点は判ったわ。

 後は、この病因からの広まりを止めるだけ!

 今日・明日中には片を付けるわよ!」

「ああ、リアルタイムで丁度1週間になりそうだしな!

 しかし、天界からの災いか。正に天災だな!」

 恭次の言葉に、隼那はㇵッとした。

「『丙午』の7年ズレ説、由来はコレなのかも……」

 コレは大変な事になった。

 イ〇ス=キ〇〇トの生まれ変わりと称する者は、少なくともコロナ禍をその誕生を以てしずめなければならないのだ。

 艱難辛苦かんなんしんくの7年。7年限りの約束をした筈だ。

 それとも、艱難辛苦の7年とは、もっと厳しいものなのだろうか?

 だとしたら、神、クズである。

 否、それはとうに判明している事だ。

 全知全能の神は、全魔王の知恵や知識・能力の全てを備えているのだから。

 それが、『全知全能』の宿命である。

 反論出来るのならば、してみるが良い。

 コチラは、幸運など自ら手に入れる事が不可能であることを知っている。

 だが、豪運は持っている。

 今、この時を以て、隼那&恭次の病魔撲滅作戦は終結を迎える。

 一週間限りと云うのが約束だった。

 ソレに反し、恐らくは7年間は戦いを終えようとはしないコロナウィルスなどに、『アイ』のエネルギーなぞ、もうやらん!

 恐らく、誰かが――否、何かが、『アイ』のエネルギーを吸収して、病魔に変換しているのだろう。

 プラスティックのリサイクルのシステムの断片は見て来たが、エネルギーを病魔に変換するシステムは見て来ていない。

 誰かから聞いた。『世界が物語化している』、と。

 恐らくは、その一連の歴史の記述が、新しい神話となるのだろう。

 兎も角、病魔撲滅作戦も、今日で終わりである。

 終わってみれば、短い戦いだった。

 しかし、当初の予想通り、コレで完全に病魔が撲滅されている気配は無い。

 だが、くさびは打ち込んだ。

 後は、全人類が協力して、その楔をより深く打ち込むだけだ。

 隼那と恭次の役目は、ココまでだ。

 次は誰が動くか……。

 予想は付いている。――否、想定外の事情があって、『リョウ』と云う名前しか判明していない。

 苗字も不明だ。

 漢字では、恐らく『療』と書く。

 貴重な『Swan』使いだ。

 彼と紗斗里が協力してくれれば。

 恐らく、コロナウィルスの駆逐も時間の問題だ。

 或いは、コロナも通常の風邪と大差ない扱いにまで落ち着く。

 遅くとも、西暦2026年で終わって欲しいものだと、隼那も恭次も思うのだった。