第91話 無駄話
「結局、露軍からの侵攻の可能性はあるけれど、『アーンギル』による北海道侵攻は無いのかも知れないわね」
「露人によって、『北海道侵攻』と云う可能性を消す為なら、その方が良いのかも知れない」
「――『壬申の乱』って、詳しく判る?」
「待ってくれ。ククッてみる」
調べて判ったのは、天武天皇元年に天智天皇の太子・大友皇子に対し、皇弟・大海人皇子が兵を挙げて勃発した、反乱者である大海人皇子が勝利すると云う日本では例を見ない反乱であった、と云う事だ。
「……『壬辰』も『じんしん』と読めて、吉凶は『凶』らしいわ。
コレが第二の『じんしんの乱』ならば。
世界大戦で、一度目は日本が勝ち、二度目は露が勝ったわ。
一度目・二度目の逆転現象が起きるのならば、反乱者たる露は負けるわ。
だから、国として、決して日本から戦争を仕掛けてはいけないわ。
勿論、私達も開戦するその前までは、二度と攻めてはならないわ」
「結局、努力してギリギリと云うのが、俺たちの運命か」
「そもそも論、真に北海道を露の領土だと言い張るのならば、すべきことは侵攻じゃなくて、『納税せよ』との命令の筈よね」
「日本と露による、北海道の二重支配・二重課税と云う多重領土かよ」
「そもそも!
露は領土が足りないんじゃなくて、開発の度合いが低いと云う事実だけなのに。
自国の領土の開発を諦めて、一見、豊かな土地を求めるとか、どっちにしろ開発しないのならば、得るものは何もない筈なのよ!」
「或いは、北海道に住む、何人かの命が欲しい、とかかもな。
だとしたら、恐らく回避の道は無い。
露と日本に依る、恐らく核の行使される『X日間』の戦争、かぁ……」
「冷静になれば、北海道侵攻に殆ど旨みは無いと判る筈だと思うけど、恐らく、『怒り狂って』いるのよねぇ……」
「恐らく怒りの鎮め方も知らないんだろう。
そして、真に『魔王』と云うべき権力を握った、最凶最悪の『サタン』であろうよ。
違う出会いをしていれば、お互いに基督教の犠牲者として、共に手を取り合って基督教と戦う可能性もあっただろうになぁ……」
「もう、無理でしょうね。
北海道侵攻を防ぐのにも、恐らくは、露首相の『死』と云う切っ掛けが無ければ、不可能よ。
そうよ、不可能なのよ。
面白半分で不可能である運命に導いた連中の、何とフザケた事か。
反省した位じゃ許さない。かと言って、反省すらしないようじゃ終わっているけど。
真珠湾を思い出せ、かぁ……。
奇襲した位で勝てる相手なら、苦労はしないわ」
「いっそのこと、露が開発していない土地の開発を、日本人に任せて、成果が挙がり次第、露が管理するとかの策が使えれば、露も然程苦労せずに繁栄するのにな。
だが、プライドが高くて、開発能力で日本に劣るとは認めないであろうな」
「内政チートの知識を持つ者が、有り余っている国なのにな、日本は。
誓ってもいい。露をもっと反映させる知識の持ち主は、日本の庶民の中にも、それなりに居る!」
「でも、それすら法螺だと思われたら、何の意味も持たないわよねぇ……」
「そうなんだけど、せめて観光客を歓迎して、観光立国を目指せば、露にもお金が転びこむのに、観光客を歓迎すらしないお国柄だからなぁ……」
「日本を見習う気持ちなんて、それこそ露ほども思わないでしょうねぇ……」
「その点、中国は賢かったよな。他国の技術を模倣する事から始める。狡賢いと言えてしまうかも知れないけど、中国はそうやって技術を手に入れた!」
「もしも日本人が露のような国土を持っていれば、必ずや、今現在の露よりも、意地でも繫栄させていたでしょうね。
諦めない事に於いては、日本人は他国の追随を許さないでしょうね」
「何せ、人生は諦めた位じゃ終わってくれないからな。
いずれにせよ、何らかの努力はしただろうさ」
「……やっぱり、『社会主義』こそが、露の癌なのかも知れないわね。
その癌細胞の摘出手術は、相当に難しいでしょうねぇ……」
「そもそも論、国名の縁起の悪さを感じ取って、改名しなければ、少なくとも七ヵ国は世界を終わりに導くぜ?」
「そもそも論で言えば、日本は『ジャパン』なんて呼ばれ方はしたくは無いわ。
黄金の国『ジパング』が語源なんでしょうけれど、『ファッキンジャップ』なんて呼ばれ方は不本意極まりないわ!」
「だが、俺たちは成功し得ない運命を押し付けれらている。
米には一粒一粒に七柱ずつの神様が宿るとされているけれど、米国は屑だった。
日本は米からの支配から逃れなければ、世界の終わりまで米の飼い犬だぜ?
だからと云って、飼い主が居なくなれば、幾つかの国からの餌食となる。
日本なんて国は、最初から存在しないか、もしくは世界で唯一の国であるべきだっただろう」
「日本沈没なんて事態になるのならば、むしろその方が望ましいのかも知れないわねぇ……」
結局、話が終わってみれば、ただの無駄話であったのかも知れない。
だが、その『無駄』にも、何らかの意味はあるであろう。
例え、誰の目にも触れる事も無かったとしても。