第10話 無理矢理
俺は今日、オーディン様の居るパーティに参加すべく、パーティ募集欄を眺めていた。
因みに、そのパーティ募集欄とかを見る端末は、意識のスイッチ一つで現れる、浮遊型タブレット端末によるものだ。
ターゲットは分かっている。彼を見付けられるかどうかの問題だけだ。
尚、意識のスイッチ一つで現れてくれるのは、「ステータスオープン!」とかと声を出して言わなくて済む分、非常にありがたい。
まぁ、その方法でも出来るそうだが。単に、意識のスイッチを入れるキーワードとなるだけらしい。
うーん……今のところ、見当たらない。
こうなったら、フォルトゥーナ様の神殿に行って、『幸運のLucky Charm』でも買って来よう!
……
………
…………
良し!無事に『幸運のLucky Charm』をゲットした!
コレで、幸運のスキルレベルが――『6』になっている!!
あと、運命の三女神様、『the Fate』の内、未来を司る女神様・スクルド様にもお参りに行く。
リアルでお参りに行けたら良かったんだけどな!俺は、ウルド様・スクルド様・ベルダンディ様が誰なのか、見当が付いているからな!
ただなぁ。『♪ずっと好きなようにしてて良い』とか云うフレーズは、努力の放棄者が大量に出てしまうから、止めて欲しかったが。
でもなぁ。努力の放棄者が犯罪に走る場合、犯罪をする為には、やはりそれ相応の努力が必要であり、ほぼ確実に捕まる事を考えると、努力して犯罪して利益得て捕まって罰金及び懲役を科されて、何もかもを失い、しかも努力をしないのだから、その繰り返しになる人生で本当に良いのかと、三日三晩問い詰めたい。
それならば、努力して、成果を出して、利益を得て、社会的に認められて、地位や名誉を得て、お金も十分かは分からないけど得られて、犯罪に走らない限り自由であるのと、どちらが良いのか、究極の二択を迫りたい。
まぁ、俺の場合、この究極の二択は、ほぼ一択だから、努力する道を選び、それ相応に腕前は未熟なれど認められているから、努力する選択肢を選んで正解だったと思う。
過去の努力も、然程無駄にはなっていない。
努力は、いつか報われる。例え、今世では無くとも、来世で恐らく、その努力の分の差が現れる。
努力をしない連中は、『努力をしない選択肢を選ぶことによってせざるを得ない努力』をして、犯罪に走り、捕まって、そんな人生の繰り返しで、いつまで経っても報われない輪廻に囚われている事に、いつ気付くのだろうか?
恐らくは、頭が『悪い』連中なのだろう。二つの意味、両方の意味で。
俺の場合、イジメ尽くされた挙句、『怒り狂った』時点で、頭が『悪く』なっていた事に気付いてから、言動を『良く』する事に努力している。
頭が『悪く』なっていた事に気付く事が、『魔王堕ち』のトリガーだ。
それを知っている俺は、『ビール』がやけに好まれる理由をも悟った。
プロレスで、『悪役』を『ヒール』と呼ぶ。コレを濁して、『ビール』だ。
『役目』だけの『悪役』でも、やはり『悪』は嫌だ。確かに、七つの大罪を『全て引き受ける!』と覚悟しての『魔王堕ち』だったが、二つは引き受け損ねた。
でも、その二柱は、相当の執念でその座を引き受けたのだろう。少なくとも、俺が背負う事を許さない程度には。
閑話休題。
さて、再びパーティ募集をチェックしてみる。
――やはり、居ない。
北欧神話の主神だから、人数は多いと思うのだが。
今日は諦めて、明日以降に期待してみても良いかも知れない。
とりあえず、『柱を討つ武器』である弓を、アルテミス様の神殿まで買いに行った。『アルテミスの弓』だ。
この弓に、『グングニルの矢』と云うものでも存在すれば、かなりの確率で『Water Satan』を討てると思うのだが、残念ながら、『グングニル』は槍だ。
――ん?『槍』……『矢理』か。無理矢理でも、『グングニルの槍』を『アルテミスの弓』で一射入魂して撃てば、『Water Satan』を討てるのではなかろうか?
試してみる価値はあると信じたい。
何にせよ、リアルの自分に危害を加えて来る可能性のある柱だ、見過ごせない。
リアルでの自分の安全を確信するまで、ラスボス「Water Satan」の討伐は、絶対だ!
希望は恐らく、2024年にある。ソレを取り逃さなければ、『西暦の3~5年ズレ』説に従い、コロナ禍から始まった世界的危機は、既に過ぎている、もしくは間もなく過ぎようとしていることになる。
ただ、どちらの仮説の方が正しいのかは、結末が訪れるまで、分からない。
恐らくは、2024年に訪れる希望とは――ソレが一体何なのかを、今の俺は予想すら出来ていない。